春近し。皆さんはどんなときにその訪れを感じますか? 立場が違うと視点も変わるため、春の到来を告げるものやタイミングもさまざま。さて、京都で活躍するこちらの6人に届く〝春の便り〟は━。
京都市動物園の島田かなえさんは、飼育員になって2年目。先月26日朝、いつものように担当するサル舎へ行くと、マンドリル(オナガザル科)のオネが、生まれたばかりの赤ちゃんを抱っこしている姿を見つけました。
「妊娠を確認したのは昨年11月ごろ。マンドリルの妊娠期間は180日なので、赤ちゃんには少し早い春に会えると思って心待ちにしていました」。赤ちゃんが春を連れてきてくれたようですね。
現在、お父さんのベンケイは別室で生活。2匹の間にできた第1子のマンゴーとオネ、赤ちゃんが一緒の部屋で過ごしています。
「おっぱいも上手に飲ませていますし、心配せずに見ていられます」とのこと。
「今は、ずっとお母さんにくっついている赤ちゃん。暖かくなるころには、少しずつ離れて動きだすと思うと、春の到来が楽しみです」
フランスで生まれ、フレンチの料理人として京都で14年を過ごしてきたステファン・パンテルさん。昨年、オーナー・シェフを務める「リョウリヤ ステファン・パンテル」を開業しました。
そんなステファンさんは、「フキノトウが出てくると、もう春なのかと気持ちがあせります(笑)」と話します。1月下旬のころですね。
「メニューは、季節を先取りして考えるもの。でも、クリスマス、年末年始はバタバタと忙しく、そのころはまだ春の料理に考えが及んでいないんです。フキノトウの顔を見ると、次の料理を考えなくてはと背中を押される気がしますね。同時に、春に向かう楽しさも感じます」
フランスでは、山菜や野草を食べることはあまりないそうですが、地元で収穫された食材にこだわるのがステファンさん。大原や静原などで採れたフキノトウを使って、香りを生かしたソースに仕上げることが多いのだとか。
「少し青い匂いがいい。日本に来てから、旬をいただく楽しさに目覚めました」
地下鉄「四条」駅の構内にあるガラス張りのショーケース。展示されているいけばなに、季節の彩りを感じる人も多いのでは? このコーナーでは、池坊学園エクステンション講座でいけばなを担当する講師5人の作品を展示していて、週1、2回入れ替えられています。
「一番春を感じさせてくれる大好きな花がチューリップ。年中出回ってはいても、この季節はひときわ美しさを増しています」と明るい笑顔の講師・正村曉子(さとこ)さん。
「スイートピーやフリージア、マーガレットなどやわらかなパステルカラーの花が多いのが春。幸せなイメージを抱きますね。春の花たちが出始めると、気持ちがワクワクしてきます」と、花を見つめながらにっこり。
それが、花器にいけはじめると表情が一転。「花を美しく生かすためには、決断力が必要。花と対話しながら『きれいね。今日の主役はあなたよ』って。花たちも私の気持ちに応えてくれるような気がします」