地下鉄「鞍馬口」駅から上御霊前通を西へ。堀川通の少し手前、妙覚寺の東隣にある一軒家が、毎週水曜日は親子の、そして木曜日は小学生の集いの場に変身します。ここ、「スペースウェル京都」のドアを開けると、にぎやかな声が聞こえてきますよ。
10月にオープンした「スペースウェル京都」の主宰者は、この一軒家の住人である藤岡芳子さん。元小学校教諭の藤岡さんは現在65歳。退職後7年目にして、子どもたちが集まれる場所をつくりたいと開設しました。
「地域の人と交流したいという思いもありましたし、何より、自分自身子どもが好きだったので」。そう話す藤岡さんの優しげな視線の先には、ハイハイをしながらそばに来た赤ちゃんが。
取材に訪れた水曜日は、「おやこのひろば」の日。主に、0~3歳の乳幼児とその親を対象に開かれています。参加していた親子は2組で、8カ月の赤ちゃんと一緒に来ていたスルー真奈美さんは毎回参加という“皆勤賞”を誇ります。
「親以外の大人と接したり、同じ年くらいの子と遊ぶ機会をつくれるのが魅力。それに、私の息抜きにも(笑)」
真奈美さんに誘われて初めて来た女性は、「家だと遊ぶスペースも制限がありますが、ここは広いし、いいですね」。
「おやこのひろば」では、絵本を読んだり、おもちゃで遊んだり、と過ごし方はいろいろ。ですが、「大きな目的は親同士が語り合うこと、親が“見て感じること”」と、藤岡さんとともにスタッフとして対応する朱まり子さん。
「ほかの親子と出会うことで、『このくらいの年齢になったら、こんな遊びができるんだ』とわが子の成長を楽しみにしたり、自分の子どもよりも小さい子を持つ人には、経験を話してあげたり。こういった、“役に立つ喜び”を感じることも大切ですよね」
そして翌木曜日。記者は再び「スペースウェル京都」を訪れました。
この日に行われていたのは、小学生を対象とした「しゅくだいひろば」。午後3時30分を過ぎると、次々と小学生が集まり、早速、宿題に取り掛かります。小学生たちの前には、2人の大学生と藤岡さん同様、元小学校教諭のスタッフが。宿題のサポートをしてくれるのです。
算数のドリルを見ながら大学生スタッフの山口美起さんが「二九…?」と声をかけると、小学2年生の男の子は「十四、いや十八!」と答えて、解答を書き込んでいきます。同じく大学生の後藤岳穂さんも両側に座る小学生に目を配りながら、「勉強を強要することはありません。来ることが楽しいと思えたら、勉強したいという気持ちにつながると思いますから」と雰囲気づくりも大切にしているようでした。
「ここだと集中できる」「1人よりも、みんなと勉強した方が楽しい」。そう話す子どもたちが向かったのは隣の部屋。宿題を終えた子どもたちは、ここで本を読んだりゲームをしたり、自由に遊べるのだそう。
「宿題が終わったらみんなと遊べると思うのも、勉強を頑張れる秘訣(ひけつ)ですね」と笑う藤岡さん。「ここは子ども同士がつながる場でもあるし、子どもを介して親もつながっていけます。こういった場所が地域でもっと増えていけばいいなと思います」
「スペースウェル京都」(上京区上御霊前通新町西入ル)で実施の「おやこのひろば」(毎週水曜日午前10時~正午)、「しゅくだいひろば」(毎週木曜日午後3時30分~5時30分)は、いずれも予約不要・無料。問い合わせは、藤岡さん=TEL:090(9866)6251=へ。