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京美人プロジェクト④:ゆっくり、やさしく 京言葉でおつきあい

4月から始まった「京美人プロジェクト」は、京都ならではの暮らしを楽しみ、みんなで〝京美人度〟をアップしようという企画。これまで、さまざまなテーマのもと紙上レッスンを行っています。第4回は、リビング読者から京美人の要素として多く挙げられた「京言葉とやわらかい話し方」をピックアップ。1面では「京言葉」について、2面では京美人流コミュニケーション術を紹介します。
【写真上】読者の近藤晴美さん(左)と藤野雅代さん。「職場で会う年配の方に、知らない言葉を聞くことがあります。京言葉ってたくさんあるんだな、って勉強になります(笑)」と近藤さん

1200年間磨かれ続けた言葉


「京言葉が話せる」(女性・54歳)、「言葉遣いがやさしく、でも、きっぱりとした女性」(女性・39歳)といった声に見られるように、京言葉そのものへの関心はもちろん、京都人ならではの話し方にも、多くの読者が魅力を感じているようです。

「京言葉は、平安京のころから1200年以上かけて磨かれてきた言葉です」

やわらかな口調でそう話すのは、「京ことばの会」代表の中島さよ子さん。「平安京ができてから明治維新までの間、京都は日本の中心でした。室町時代には、衣類や食べ物などを運び込むために、御所に町衆が出入りするようになり、町衆たちは、そこで耳にした女官たちの話すみやびな御所言葉に、憧れを抱いたのではないでしょうか。町衆を介して御所言葉が町中に伝わり、また町衆の言葉も御所で知られるようになった、といわれています」

京都生まれ、京都育ちの中島さよ子さん。2004年、京言葉を語り継ぐために「京ことばの会」を発足。母との会話が中島さんの京言葉のベースになっているとか。好きな京言葉は「かんにんえ」

たとえば「目ぇ」「手ぇ」「木ぃ」など、母音を伸ばすと独特のゆったりとした響きが感じられますよね。独特の響きがやさしく、きれいに聞こえる効果を生み、上品な御所言葉の雰囲気をかもしているようです。

この「やさしく聞こえる」という効果は、京言葉の重要なポイント。


相手への気遣いを最優先


人の意見に対して「違うのと違いますやろか」という返事を聞いたことはありませんか? これは、遠回しに、しかしはっきりと反対しているということ。賛成でも反対でもどちらでもないという意味ではないのです。

「はっきりと、面と向かって、『違います』と言うたら、相手は嫌な気持ちになりますやろ? 返答しにくくさせているかもしれません。ストレートで品のない話し方は、自分もいや。そこで、まず相手の立場を気遣い、角が立たないようにしながらも、遠回しに言うという話し方が当たり前になったんだと思います」と中島さん。京言葉は、相手への気遣いが最優先のようです。

「京都は、御所を中心に権力争いが絶えませんでした。しょっちゅう戦闘状態になるこの町で、庶民は生きていかないといけない。自分の身を守るために相手を立て、直接的な物言いを避け、えん曲な表現が発達していったのではないでしょうか」


丁寧語、二重表現など独自に進化


京都の人たちの苦労がうかがえる言葉は、ほかにもあります。「お豆さん、お芋さんっていいますやろ? 食材にも敬語を使うのは、不思議に思われるかもしれません。私見ですが、権力闘争などに巻き込まれた庶民の食生活はとても厳しく、食べ物を大事に大事にした表れではないかと思います」

「大事に大事に」と言葉を重ねる中島さん。「私、特に多いんです(笑)。話の中で重要な部分の言葉を繰り返す二重表現も、京言葉の特徴です。これも、相手に分かりやすく伝えるための工夫だと思います」

京言葉の裏には、歴史と文化、たけたコミュニケーション術があるのですね。

「京言葉はゆっくりゆっくりと変わってきました。しかし、変化の速い現代社会において、京言葉が話せるのは大正時代や昭和一桁生まれの人たちだけといってもいいような状況です。京言葉の良さを次の時代につなげていきたいんです」と思いを話してくれました。

そこで、2面では京言葉を使った〝京美人流コミュニケーション術〟を紹介します。

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