「ドライフルーツとくるみ」「ボロネーゼ」「豚角煮とショウガ」…。「西冨家コロッケ店」に並ぶのは、そんなちょっと変わったメニューの数々。河原町通松原を下がったところにあるお店も、一見したところカフェやバーのような、おしゃれな雰囲気です。
「コロッケが好きだから」。店主の西冨学さん(34歳)がそんな思いで会社員をやめて、この店を開いたのは2012年7月のこと。目指すのは、〝ディナーの中心になるコロッケ〟です。
「最初はポテトとホワイトソースで作った『プレーン』の一種類だけでと思っていましたが、友人のアドバイスもあって、種類を増やすことに。どうせやるのなら、普通のコロッケにはない、面白いものをと考え、何十回と試作を繰り返しました」(西冨さん)。それが冒頭の〝コロッケらしからぬ〟中身。どんな味がするんだろうと、期待が高まるものばかりです。
基本的にはテークアウト専門ですが、金曜と土曜の夜には、店内でお酒と一緒にコロッケを楽しめる「酒場営業」も。「丁寧にちゃんと作れば、コロッケは洋食だから、ワインにも合いますよ」
どちらかといえば庶民的な存在のコロッケは“おかず”といったイメージ。それをディナーのメインディッシュに引き上げる西冨さん。コロンとした俵形のコロッケのなかには、たくさんの可能性が詰まっています。
8年前まで西宮市のアパートで、夫と子どもの3人暮らしをしていた浜谷冨美子さん(47歳)。転居を考え始めたころ、漠然と思い浮かんだのは「古い木の家」でした。
「子育てを考えたとき、バリアフリーではなく、段差があったりする〝バリアアリ〟がいい。暑さや寒さを肌で感じることも大切だと思いました」(浜谷さん)
一年をかけて夫の通勤圏内の物件を探した結果、出会ったのが明治35年建築の現在の住まい。「町家でなくても、古ければよかったのですが、玄関から奥の庭まで見渡せる、のびやかな造りが気に入りました」と言います。
ところが住み始めると、やはり町家暮らしは大変! 特に驚いたのは寒さだったそう。「友人が来ても、家の中でコートは着たままでした(笑)」。そこで翌年リフォーム。1階を一部板張りにして、床暖房を導入。そのほか壁を白く塗ったり、2階の天井を取り外して広々とした空間にしたりと、町家暮らしを浜谷家流にアレンジ。築100年以上を経た町家が、生活の場として生き生きとした住まいに。
また、浜谷さんのライフスタイルにも変化が。もともと建築関係の仕事をしていたこともあって、2年半前まで町家に関するセミナーを企画するなど、所有者と専門家のパイプ役として京都市の施設に勤務。来月以降、家の通り側にある「店の間」を使って雑貨店を開く予定です。
「ギャラリーのように見てもらって、町家の住まい方を知ってもらえたら」と浜谷さん。浜谷さんの住む町家は、情報発信の場としても活躍していきそうです。
予期せぬ出会いが人生を大きく変えたり、ずっと好きだったことを極めて夢をかなえたり。さまざまなケースを紹介した、今回の「であいもん」特集。読者アンケートでも「あなたのであいもんは何ですか?」と尋ねてみました。結果は、家族、友人、仕事などをあげる声が多数。身近な存在同志がお互いを高めあえるなんてステキですね。