毎年8月に東山・五条坂で行われている「陶器まつり」。この祭りで、かつて人気の的だったのが、陶器神社がある若宮八幡宮の境内に展示された「陶器人形」です。50年ほど前に廃れたこの人形を、今夏、復活させる取り組みが進行中です。
陶器人形は、皿などの陶器類を使って装飾された等身大の人形。
「いつ始まったのかはよく分からないんです。昭和24年に若宮八幡宮の中に陶器神社が合祀(ごうし)され、今のような陶器まつりが行われるようになったので、それ以降のことだと思います」
そう言って、1冊のアルバムを見せてくれた若宮八幡宮宮司の松井曜子さん。幼い松井さんの写真もおさまる家族アルバムには、陶器人形の「牛若丸と弁慶」「アトム」「力道山」といった姿が!
「題材を変えて毎年登場していました。おもしろかったですよ」
しかし、「昭和40年代には作られなくなってしまって…。大変な手間がかかるからでしょうね」。
松井さんは、陶器人形の復活を願っていたそうです。
若宮八幡宮のある東山区六原学区では、10年ほど前から、歴史遺産を発掘し地域活性化につなげるという京都造形芸術大学のプロジェクト「まか通」が行われています。
学区内の家々の屋根に、家内安全の守り神〝鍾馗(しょうき)さん〟が数多く見られることから、昨年は、等身大の鍾馗さんを若宮八幡宮に奉納。その縁もあって、松井さんは「陶器人形の復活」を、まか通を指導する同大学教授の関本徹生さんに話しました。
そこで、「現代の材料や技術を使って、地域の人たちと一緒に復活を」となったのだとか。
人形を装飾する陶器は、地元・五条坂の陶工からもらい受けた清水焼の品々。「復活第1弾のテーマは、物などに宿る神様『付喪神(つくもがみ)』です。3体作り、まつりのあとは、若宮八幡宮の宝物殿に収蔵することになっています」
人形は、一つひとつの陶器に針金を回しかけ、木組みで作った骨格に針金部分をひっかけて装着させ制作します。毎週、学生や地域の人が集まり、こつこつと作業を続けているそう。取材時には、近所に住む加藤昭代さんも手伝いにやってきていました。「私は、37年前に引っ越してきたので、陶器人形を見たことがないんですよ。どんな人形が出来上がるのか楽しみです」
「いずれ、地域の各町ごとに人形を制作するようになったらおもしろいと思います」と関本さん。
陶器人形の展示は、8月7日(木)~10日(日)、陶器神社境内(東山区五条橋東5丁目480)にて。
松井さんは、「地域の人はもちろん、全国の人にも陶器人形を見てほしい」とうれしそうに話してくれました。