多くの観光客が訪れ、宇治のシンボルともいえる宇治橋上流の中の島エリア。宇治川の河川改修工事に伴い、多くの樹木が伐採されたニュースを聞いて、残念な気持ちになった人も多いのでは? そんな中、この景観を守り、未来に残していこうと「宇治川サクラプロジェクト」が昨年6月にスタート。この春から桜の植樹活動を始めています。
宇治川の上流を宇治橋から望む景色は、国の重要文化的景観にも指定され、桜の名所として親しまれています。
ですが、この辺りは宇治川が増水する危険があると宇治公園中の島にかかる橋に通行規制がかかり、世界遺産の平等院と宇治上神社の行き来に時間がかかることが長年問題視されていました。
そこで行われたのが、洪水対策のための河川改修工事。その過程の中で塔の島北東側の桜が伐採されたのが、昨年のことでした。
「伐採を嘆くのではなく、宇治川沿いの景観を再生させるためのチャンスとして捉えることにしたんです」と話すのは、「宇治川サクラプロジェクト」を主催する宇治市観光協会の徳永聡志さんです。
川沿いの樹木の中には、部分的に枯れている桜の古木や撤去する必要のある雑木も多く、もともと桜並木の手入れが課題としてあがっていたのだそう。
河川改修後の宇治橋上流の風景を見据えて活動しようと立ち上がった同プロジェクトは、市民や企業からの寄付によって運営されているのだそう。今後約3年をかけて古木を若い桜に植え替え、間隔が開いている場所には新たに植樹をしていくのだとか。
「開花期間を長くするため、あえて複数の品種を植える予定です。工事が終われば、塔の島と橘島の中には桜や松などが植樹されますが、将来的にはこのプロジェクトで維持管理を行い、宇治川上流の景観維持のために市民と一緒に行動していきたいと考えています」と徳永さん。
昨年9月には、第1回市民ワークショップを開催。24人の参加者が、まずは宇治川沿いの木々について現状を把握しようと視察。その後、4グループに分かれて、「いいところ」「悪いところ」「植樹の方向性」について意見を交換。「このまま放っておくと枯れてしまう」「桜以外の木も、伸びている枝は手入れしないと川面が見えない」など積極的な意見が飛び交ったのだそう。
「これからもワークショップを開催して、宇治川沿いの景観をみんなで考えていきたいと思っています」(徳永さん)
ワークショップで出た意見を参考にして、3月上旬、植樹活動を開始。宇治川右岸上流にオオシマザクラ4本、エドヒガンザクラ2本、ソメイヨシノ8本の計14本が植樹されました。今後も、工事の進捗(しんちょく)状況も踏まえ、春に植樹をする予定なのだとか。
宇治川の桜をめでる恒例イベント「宇治川さくらまつり」が今年も4月5日(土)・6日(日)午前10時〜午後5時に中の島で開かれます。同プロジェクトのブースも登場し、パネルが展示される予定。散策もかねて出かけてみませんか。問い合わせは宇治市観光協会=TEL:0774(23)3334=へ。