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試写室・劇場から

家族の灯り

3月29日(土)から京都シネマで公開

©2012 - O SOM E A FURIA / MACT PRODUCTIONS

油絵の中の人物が動くような、美しい映像で描く家族の悲劇

一人の男が海辺に立つ冒頭の構図のすばらしさを見るなり、この映画の質の高さを予感した。ポルトガルの名匠マノエル・ド・オリヴェイラ監督は105歳になったが、創作意欲満々、毎年1本のペースで新作を発表しているというから驚く。ジャンヌ・モローやクラウディア・カルディナーレといった名優を迎えた本作は、登場人物の心のひだに入り込むような演出力がきわだつ。

物語はある一軒の家の中で展開され、演劇の舞台を思わせる。ここにはあるじのジェボ、その妻のドロテイア、息子ジョアンの妻のソフィアが暮らしている。8年前に突然いなくなったジョアン。彼の不在が、家族に大きな影を落としている。裕福でない単調な暮らしを嘆く妻に対し、ジェボは「何も起こらない人生、それこそ本当の幸福といえる」と答えるのだが、ある日、ジョアンが戻ってきて…。

まるでレンブラントの絵画のようと評された画像の美しさ! そして、まさにレンブラントが描いた『放とう息子の帰還』を連想するお話だが、監督は異なる視点でこの家族の姿を切り取る。妻を思いやる故に、そして息子を救う故に、ジェボが選んだ言動の切なさが胸にしみ込んでくる。ジェボ役のマイケル・ロンズデールの演技はまさしくいぶし銀だ。

(ライター 宮田彩未 

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