京都市伏見区には、地名をはじめ、名前の一部に“桃山”とついた施設や駅も数多く存在しています。そんな伏見区の街じゅうを、“本物”の桃でいっぱいにしようと住民グループが活動中。その方法というのが桃の木の植樹です。5月には、伏見北堀公園で植樹活動が行われました。
「江戸時代に入ってから、伏見城跡には数万本の桃の木が植えられ、松尾芭蕉や正岡子規も俳句に詠むなど吉野の桜と並ぶ花見の名所だったそうですよ」と話してくれたのは、「桃山プロジェクト」代表・藤崎壮滋さんです。
伏見城跡といわれると、伏見桃山城運動公園(前キャッスルランド)を想像しがちですが、これは当時の城郭の一部。戦後、広大な伏見城跡に残っていた桃や梅などの樹木は宅地開発に伴って伐採されてしまい、“桃山”という地名だけが今に残ったのだとか。
住宅地図を調べてみると、京阪「伏見桃山」駅から東側一帯、「六地蔵」駅手前まで“桃山”で始まる町名が確かに続いています。町の名前の由来にはそんな理由があったんですね。
「歴史や景観など、たくさんの魅力がある伏見の知名度を全国的にもっと高めたいんです。桃を切り口にすることで、実現できるのではないかと考えました」と藤崎さん。
地元を盛り上げようと数年前から企画を温めていた藤崎さんが、仲間を募るため伏見区役所で行われている「伏見をさかなにざっくばらん~思いをかたちに~」に参加。集まった仲間と2012年夏に同プロジェクトを立ち上げました。
メンバーは現在15人。伏見と桃の歴史を調査する「研究チーム」と桃の木の植樹を進める「植樹チーム」に分かれています。
記者が取材に訪れたのは5月初旬のこと。3月に植樹した保育園や小学校などに次いで、6カ所目となる伏見北堀公園にメンバー4人が集まりました。
公園の整備をしているボランティアグループ「みどりの会 伏見桃山」の担当者と話し合いながら植樹する場所を決めていきます。
場所が決まると、30~40センチの深さに掘った穴の中に桃の木を置き、水はけの良い土を好む桃に合わせて、掘り起こした土と鹿沼土(かぬまつち)を混ぜて固めます。そして、木を3本の支柱で固定。最後にバケツ1杯の水をかけて完了です。
全員がスコップを手に持って、スピーディーに作業を進める手際のよさに感心していると、「10本も植えれば要領をつかめます。これまでに35本植えているので、もうプロみたいなものですよ(笑)」とメンバーの江崎さん。
「3年で1000本を目標に掲げています。これから迎える梅雨時季は植樹に比較的、適しているので、どんどん作業を進めていきたい。伏見の街じゅうが桃の花でいっぱいになって、区外からも見に来てもらえるようになればうれしいですね」と藤崎さんは話してくれました。
同プロジェクトでは、一緒に活動していくメンバーをはじめ、植樹ボランティアも募集中。詳細は、ホームページ(http://www.momopro243.com)で確認を。