歴史ロマンに思いをはせて
ゴールデンウイークは郊外のお城へ

「城の別名の由来には諸説ありますが、ある古文書には、築城する土地を検分していたときに鶴が舞い降りた、と書かれています」(岸田さん)。写真は、1992年(平成4年)、城のシンボルとして再建された田辺城城門。2階は田辺城資料館。JR「西舞鶴」駅から徒歩約7分

田辺城と城下町は舞鶴の礎
細川親子が愛した場所へ

1580年(天正8年)、文人としても名高い細川藤孝(幽斎)と息子の忠興は、新たな領国・丹後国に入り「田辺城」(現在の舞鶴市)の築城を開始しました。
「発達した土木技術を駆使し、平地に堅固な城を築く〝平城〟の先駆けでした。同時に、商人を呼び寄せ城下町を整備。今日の舞鶴の礎を築いたのは、細川親子です」と舞鶴市田辺城資料館の岸田芳司さん。石田三成が率いる1万5000人の軍勢と戦った「田辺籠城」など、歴史の表舞台にもたびたび登場します。
しかし、明治期の廃藩置県で田辺城は廃城。城の別名「舞鶴(ぶかく)城」の読み方を変えて、町の名前は舞鶴(まいづる)と名づけられました。「粋なアイデアですよね。細川氏から続く文化的な素地が息づいている町といえるかもしれません」と誇らしげな岸田さん。
かつて城の本丸があった付近は舞鶴公園として整備。城下町の面影が残るかいわいを巡れば、細川氏ゆかりのスポットも楽しめますよ。
※舞鶴観光協会(JR「西舞鶴」駅の西駅交流センター内)=TEL:0773(75)8600

城門を入ってすぐの場所に、築城当時の石垣が残されています(写真左手前)。全国的に知られた石工集団・穴太衆(あのうしゅう)が野面積(のづらづみ)という手法で大小の自然石を積み上げたもの
城門北側の彰古館は、1940年(昭和15年)に建てられた天守閣風の二層式やぐら。舞鶴出身の企業家の寄付のもと、城の専門家に設計を依頼したのだとか
舞鶴公園の東側に位置する回遊式庭園が心種園です。池のほとりには、古今和歌集の秘事口伝(ひじくでん)の伝承者だった幽斎が、田辺籠城の最中に詠んだ歌の石碑や戦国時代から数えて6代目の松も

天香山桂林寺

本堂の前の鐘楼堂には、忠興が寄贈した梵鐘がつるされています

曹洞宗中本山の禅寺。田辺籠城のときに、同寺の和尚が弟子14人を引き連れて幽斎の軍に加担。のちに、忠興が仏涅槃(ねはん)図や梵鐘(ぼんしょう)を寄贈しました。
※仏涅槃図などの拝観は要問い合わせ

舞鶴市紺屋69
TEL:0773(75)0168
JR「西舞鶴」駅から徒歩約15分


不動如山瑞光寺

田辺城の黒金門を移築したといわれる山門

細川幽斎が京都から呼び寄せた明誓上人(楠源吾)が創健。田辺籠城で手勢を率いて細川氏に加勢し、その恩賞として広大な寺領が寄進されました。細川家の家紋を寺紋にするなど、細川家と深いつながりが今も色濃く残っています。
※拝観は事前に問い合わせを

舞鶴市寺内100
TEL:0773(75)1045
JR「西舞鶴」駅から徒歩約17分

周山城址の西側に残る石垣の遺構。城は『本能寺の変』で光秀が敗北すると、明智の郎党によって破壊されたともいわれています

400年以上前の石垣が残る、周山城址&酒蔵見学

新緑の山里でトレッキング

「現存しているのは石垣のみですが、周山城は、織豊期の築城技術の特徴を残す貴重な文化財とされています」とは、「京北の文化財を守る会」の大平久信さん。
右京区の京北町にある周山城址。京都一周トレイルのコースにもなっている登山道を行くと、400年以上も前からそこにある石垣の一部に出合えます。大平さんによると「周山城は、1570年代、織田信長に丹波平定を命じられた明智光秀によって築城されました。本丸を中心に、東西南北に曲輪が造成されていて、山全体が城ともいえる形状で、当時としては画期的な山城だったと思われます」。
記者も実際、トレッキングを兼ねて、この石垣を見に行ってみました。「周山城址を守る会」の坂井保さんの案内のもと、登山口から約1時間。大きく広がる本丸跡に着くと一気に視界が開け、杉木立の向こうには京北の街並みが。
「築城当時は杉が植樹されておらず、眼下には360度の光景が広がっていたと思われます」と坂井さん。
城が実在したのは、光秀の晩年3年間。歳月を経た石垣を見ながら、光秀の心情や生涯に思いを巡らせてみては。
※登山道には急な上り坂や、倒木・落ち葉などがあるので、トレッキングシューズや杖などの装備がベター。
問い合わせは、TEL:090(8571)7998=周山城址を守る会、坂井さん。

頂上に広がる本丸跡。「信長や豊臣秀吉らが訪れ、茶会を楽しんだと伝えられています」(坂井さん)
(左から)坂井さんと大平さん。後方の山の頂に周山城址が。「周山は、若狭と奈良を南北につなぐ周山街道と、琵琶湖と京を結ぶ東西の街道が交差する重要な拠点だったんですよ」(大平さん)

(左)タンクが並ぶ酒蔵。併設のビアハウスでは、酒類の購入ができるほか、山並みを眺めながら飲食も可能 ※飲食は要予約
(右)出荷作業の様子も見学できます

地元の恵みを生かした酒造りの現場を見学

トレッキング後は登山口近くにある「羽田酒造」へ。同社では、桂川上流の伏流水を使った地酒や地ビールなどを製造。築100年以上の蔵や、製造現場などの見学もできます。 ※見学は要予約

羽田酒造=京都市右京区京北周山町下台20
平日:TEL:075(852)0080
土日祝:TEL:075(852)0996

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