今、伏見では、街全体を楽しい博物館にしようという動きがスタートしています。建物がないというのもユニークなこの活動。一体どのような取り組みなのでしょう。3月10日に行われたオープニングデーのイベントをのぞいてきました。
歴史や文化、自然、産業など知られていない伏見の魅力は“お宝”そのもの─。そんな“お宝”を探究し、保存・公開することで、街全体を博物館にしようというのが「伏見まるごと博物館」です。
準備委員会が発足したのは昨年1月。メンバーは、市役所に勤務する職員、地元で商店を営む人、酒蔵のおかみさん、カメラマン、学生など伏見が好き!という20人。
発起人である伏見青少年活動センターの正木隆之さんは、「『伏見には独自の文化がある』と京都女子大学名誉教授の大國さんから言われたことがきっかけで、この企画を立ち上げました。城下町や宿場町として栄え、育まれてきた街特有の姿を伝えていきたいですね」と話します。
この1年で、方向性などについて意見を出し合いながら30回近く打ち合わせを重ねてきたのだそう。
今回のイベントは、この取り組みの楽しさや可能性を考えるフォーラムのほか、準備委員会がグループに分かれてテーマを決め、調査した内容が発表されました。
「200人に聞きました!かす汁編」は、“伏見の暮らし”をテーマにしたグループの発表内容。伏見区民約200人へ具材やみその種類、酒かすの調達方法をアンケート調査したところ、みそを入れる・入れないで大きく意見が分かれることが判明したのだそう。
メンバーの1人で結婚して伏見に住み始めたという大城さんは、「50代以上はみそを入れないという人が多く、『みそを入れたら酒かすの味がわからない』という声もありました。調査結果から浮かび上がってきたかす汁を実際に調理して試食もしましたよ。かす汁マスターだと言えるほど(笑)知識を得たつもりです」と話してくれました。この日はみそ入り・なしが各100円で販売され、売れ行きも調査の対象になっていました。
“個人史の掘り起こし”をテーマにしたグループは、「中書島」駅周辺や大手筋商店街で高齢者にインタビューをし、聞いた話を地図に落とし込んだ「思い出マップ」を作成。
かつて伏見市の誕生を記念して作られた「伏見小唄」は、“まぼろしの歌と踊り”といわれていたのだとか。伏見小唄が披露された瞬間、伝統を絶やすことなく受け継がれてきたことに驚く声も上がりました。
「今後は、内容を充実させて進化していきたい。多くの人が参加することで、地域のコミュニティー活性化につながれば」と正木さん。
これからもさまざまなテーマを取り上げて調査し、つくりあげていくこのミュージアムは、簡単に完結するものではなく、10年単位の長期スパンで取り組んでいくのだそう。
「伏見の魅力を追究し、発信する楽しさも共有したいと思っています。伏見のエキスパートになってくれる人やグループを募集しているので、誰でも参加してほしい」と正木さん。
説明会も開催(4月下旬を予定)されるので、「伏見まるごと博物館」運営委員会への参加希望者は左記へ問い合わせを。
〈問い合わせ先〉青少年活動センター内「伏見まるごと博物館」運営委員会=京都市伏見区鷹匠町39-2 伏見区総合庁舎4階、TEL.075(611)4910