京都に数あるお寺。どの寺院を訪ねても、何とも言えないすがすがしい空気、りんとした美しさを感じますね。そんな“美”を保つために、お寺ではどのように掃除をしているのでしょう? それを知れば、家庭でも生かせるのでは!? そんな思いで、臨済宗妙心寺派の塔頭(たっちゅう)、壽聖院(じゅしょういん)の住職・松山侑弘(ゆきひろ)さんに掃除に対する心構えや考え方、実際の掃除方法を聞いてみました。あなたの家でも取り入れてみては。
「コツは“毎日すること”」と話す壽聖院の松山さん。
「私はこのお寺を一人で掃除しますので、毎日全体をというわけにはいきませんが、“今日はここを”と決めて少しずつしています」
掃除に重きを置き、修行を積む禅宗。松山さんも3年間の修行時代には、座禅と食事と3時間ほどの睡眠以外、一日のほとんどを掃除をして過ごしたといいます。そんな修行生活のなかで、掃除の仕方や心構えを学んでいったのだそう。
天候が悪くても修行は毎日。雨の日はどうしていたのでしょう?
「雨が降ると外の掃除ができませんから、その場合は窓拭きを入念にします。晴れて乾燥しているとホコリが舞って、ガラスについてしまいますから、むしろ雨や曇りの日のほうが適しているんです。家庭なら普段はあまりできない棚の裏といった細かい場所をきれいにするのもいいと思います」
掃除には気持ちが表れると松山さんは言います。
「冬の寒さや夏の暑さ、そういった環境にも左右されず、毎日毎日掃除をする。無心に取り組んでいるうちに、心が清らかになるような気がします。それに掃除の内容にも、心の状態が表れますね。細かいところに気づくかどうか、あるいは、気づいてもやろうとしていないのか。自分を省みることができるのではないでしょうか」
では、壽聖院では具体的にはどのように掃除を?
「雑巾やほうきのほか、掃除機やブラシも使いますので、道具は一般の家庭とさほど変わりません。ただ、柱などの木の部分にはできるだけ化学的な洗剤は使わないようにしています。
部屋全体を掃除するときは“上から下に”。窓を開け、空気の入れ替えをしながら、壁や棚などのホコリをハタキなどで落とすことから始めます。黒い棚板などのホコリが目立つような場所は、まず乾いた雑巾で拭き取ってから、ぬらした雑巾で拭きます。最初からぬれ雑巾で拭くと、ホコリが広がってしまいます。これを気づいたときにこまめにやるようにしています」
この“気づいたとき”も大切なポイントです。
「ゴミが落ちていたら拾って捨てますよね。このように気づいた人が、気づいたときにサッとやる。誰がやっても良いのです。家の中でも、掃除をするのはお母さんと決まっているわけではありません。家族みんなですがすがしい空気をつくってみてはどうでしょう」
次は、松山さんが実際に行っている掃除法の紹介。場所ごとにアドバイスをもらいました。
雨か曇りの湿気がある日に。室内と外から、乾いた雑巾を使って、上から下へと拭き、丹念に磨き上げます。松山さんによると「内側から見るのと外側から見るのでは汚れの見え方が違いますので、両方からよく見て」とのこと。汚れのひどいところは洗剤を少し使って。