さまざまな分野で頑張る人たちにも、それぞれの学びの体験について聞きました。
考えるよりやってみるやってみる その繰り返しで学ぶ
「森田農園」オーナー 森田良彦さん
上賀茂の地で100年以上野菜づくりを続けてきた森田農園(北区)。京野菜とその加工品をつくる農家としてその名は全国に知られていますが、オーナーの森田良彦さんは「農家はほんまに経営がきつい。頭を使わな生き残れへん」とキッパリ。
3代目の良彦さん。「後を継いだころは嫌々やった」と言いますが、母親のみきさんからの一言が転機となります。
「『先代と同じことをしていても、面白くないんちゃう?』と言われ、自分の目標を見いだしました。もっと作業を楽にするには、経費を安く上げるには、多くの人に喜んでもらうためには…と工夫を始めた。とにかく何でもやってみて、やりながら考える。人生の時間は限られてるんやから、考え込んで立ち止まるのはもったいないでしょ」
最近工夫しているのが、野菜の売り方。堀川イン(堀川三条)など、街なかへの出店を積極的に行い、消費者の動向を探っているそう。
そして春からは、就農希望者や野菜づくりを学びたい人のための週末農業学校「マイファームアカデミー」にも協力。「野菜を作る人から野菜を食べる人まで増やして、日本の農業を元気にしたいね」と意欲は尽きません。
成長に必要なのは“わかる力”
女子プロ野球チーム
「京都アストドリームス」キャプテン 河本悠 さん
「野球との出会いは小学2年生。兄が入っていた地元の軟式野球チームの朝練について行ったのが始まりです」という河本悠さん。そんな河本さんは「仲間の大切さ」を野球から学んだと言います。
「野球では、メンバーの一人一人が自分の役割を理解し、それを果たすことが大切です。たとえば1番打者の役割は、ヒットを狙うことよりも、出塁して次の打者にチャンスをまわすこと。5番打者なら塁に出ているランナーをホームに戻すためのバッティングが必要です。また、仲間のピンチには声をかけて励ましますが、相手によって言い方を工夫する必要がある。物心ついたころからこうしたことを考えてきました」
河本さんがこの習慣に助けられたと感じたのは、大学卒業後の数年間、運送会社で働いていたとき。試合全体を見ながら自分の役割を考えることが、仕事の段取りを考えて動くことに似ていると気付いたそう。
「野球も仕事も、まずは言われたことを理解して、それを繰り返し実行しながら身に付けることで上達していくものだと思います。相手の言ったことをすぐ理解できる力も大事。その力をつけるためには学校で勉強することが役に立っていると思います。無駄なものってないんじゃないかな」
まずは受け止めることが大切
「京都教育サポートセンター」所長 南山勝宣さん
「幅広い年齢の人がここへ学びに来ます。不登校の生徒や引きこもりの人もいれば、放課後、学習塾として利用する生徒もいるし『大学や専門学校を受験したい』という社会人もいます」とNPO法人「京都教育サポートセンター」(中京区)の南山勝宣さん。
もとは「大検予備校」として設立された同センター。2002年からは不登校の生徒や引きこもりの人のための居場所を提供するNPOとなりましたが、「自分に自信を取り戻すための第一歩」として、今も学習指導 (有料)を重視しています。
「ですが、強制ではありません。一番大事にしてほしいのは、いろんな世代の人がいるこの場所で、人との関わりを経験すること」と南山さん。
そんな南山さん自身もこの場所を通して日々学んでいると言います。
「利用生との会話から『こんな考え方もあるんだ』と教えられます。自分と同じ考えばかりとは限りませんが、新しい物の見方が増えます。学びって『自分の中にないものを、いったん受け止めること』だと思うんです。自分の中に取り入れるかどうかは、受け止めた後で決めればいい。どんなこともどんな人も、一度は受け止め、理解しようとすることが大事だと思います」