エクササイズの際に重要な役割を果たす腹式呼吸。しかし、美と健康のためには「運動のときだけじゃなく、普段からこの呼吸を心がけてください」と山本さんからアドバイスがありました。
「日ごろ多くの人が無意識にやっている、肩や胸を上下させてする呼吸は、腹式呼吸に比べると浅くなります。先ほど話した通り、腹式呼吸は筋肉をリラックスさせることができるのと同時に、心もリラックスできるといわれます。これは、腹式呼吸によって副交感神経が刺激されるためだといわれています」
よい姿勢も大切
そして、このような呼吸とセットで心がけるといいのが「姿勢をよくすること」だそう。
「耳たぶ・肩先・骨盤の出っ張った部分・くるぶしの4点がまっすぐに並んでいる状態が、理想的な姿勢です。自分でチェックするのは難しいと思うので、まずはそうなっているイメージで立つことから始めて。このとき、おなかを引っ込めると、背骨が反らず、きれいな姿勢を保てます。この姿勢をキープしながら腹式呼吸をするだけでも、結構な筋トレになりますよ」
いくらエクササイズを頑張るといっても、その時間は一日のうちのほんのわずか。残りの時間は美しい姿勢と正しい呼吸で過ごしつつ美ボディーをめざしたいですね。
「人間の体は、基礎代謝といって、寝ているときやじっとしているときもカロリーを消費しています。呼吸と姿勢を変えることは基礎代謝アップにもつながるので、あなどれませんよ」
気が付くと、口で息をしてしまっている人はいませんか? 「口呼吸のくせは直しましょう。呼吸が浅くなりやすく、ストレスを抱えた場合には『過換気症候群』を引き起こす危険性があります。それに、口呼吸は鼻呼吸よりも雑菌が気管に入りやすいです」と「おがわ内科呼吸器内科医院」院長の小川栄治さん。
睡眠中に口が開いてしまう人には「これからの乾燥しがちな季節は、マスク着用がおすすめ。湿度が保てて雑菌も入りにくいので、風邪の予防にもなりますよ」。
「息詰まる展開」「息つく暇もない」といった言葉からもわかる通り、緊張を強いられる場面では、無意識に息を殺していることが多いですね。
「これは、抱えている不安に対し、体が戦闘態勢を取っている印です。脳が不安を察知し、それに対応するよう命令を送っているのです。こうした機能があることで、私たちは不安や緊張に適応できるようになっているんですよ」と歳森さん。
しかしながら、不安が長期にわたり過度に続いた場合、その機能に支障が生じることも。
「『戦闘態勢』に入る必要のない状況でも息苦しくなったり、動悸(どうき)が強くなったりするなど、体が不安を先取りし、ひどい場合には発作が起こることもあります。そうした状態を経験すると、ますます不安が強まるため、発作がひどくなるという悪循環に陥ります。これが『不安障害』と呼ばれるもののメカニズムです」
脳が必要以上に酸素を取り込むように命令を出し、うまく息ができなくなるといった「過呼吸症候群」も、不安障害の症状の一つ。そのような病気になった場合、心療内科や精神科を受診することも一つの方法ですが、そもそも病気になる前に工夫できることはあるのでしょうか?
「不安を意識的に断ち切ることが重要です。 たとえば、ストレスでいっぱいの状態になる前に、席を立ってお茶を飲みに行く、伸びや深呼吸をするなど、気分転換を行うことです」
特に深呼吸は、1ページ目の山本さんの話にもあった通り、息を吐くことで体の力が抜けるので、リラックスの状態を体に覚え込ませる有効な方法の一つだとか。正しい呼吸には、不安を断ち切る力もあるのですね。