数年前からごみ問題が深刻となっている桂川では、地元住民らによる清掃活動が行われています。この活動に参加している2人の画家が、このほど桂川で集めたごみを使い、1枚の大きな絵を合作しました。その絵に込めた思いとは─。
ペットボトルの容器に空き缶、ロープ、ビニールシート、軍手にうちわ、携帯電話、ジーパン…。これらは、右京区在住の袖崎俊宏さんと、フランス出身で同区在住のジャンルック・プレさんが桂川で拾ったごみのほんの一部です。
ともに環境問題に関心を持つ芸術家同士だったことから交友が始まり、桂川で行われていた清掃活動に参加するようになった2人。そして昨年、桂川のごみを使って絵画を合作することを思いつきました。
袖崎さんは松尾、プレさんは嵐山でごみを拾い、約10カ月かけて絵画「桂川のプラスチック汚染」を制作。深い青を基調としたキャンバスの上には、プラスチック片などのごみが散りばめられています。
「ごみから生まれたとはいえ、作品としての美しさがなければ芸術家の仕事とはいえない。構図やモチーフについては2人でじっくりと相談したんですよ」と袖崎さん。絵の中には、川の生き物がプラスチックの破片を誤って食べている姿などが描かれています。
「一つひとつの色や形にも意味を込めています。絵の中にいくつも描かれた渦巻きは、らせんを意味していて“悪いものを巻き取り、いいものにして生まれ変わらせたい”といった願いを込めました」とプレさん。
この絵には、作品の下の方からビニールシートがぶら下がり、床にもごみが置かれています。まるでキャンバスの中のごみが床にまで流れ出ているかのような演出です。
「これは桂川で捨てられたごみが海へと流れ、世界の環境問題の一因となっていくことを表しています」と袖崎さん。
2人が念頭に置いたのは「太平洋ゴミベルト」の問題。海流の影響で、太平洋上には世界中の海洋ごみが集まる場所があり、それらが地球上の生命に被害をもたらしているというのです。
「浮遊したプラスチックは海の上で紫外線を浴び続け、粒子に分解され、それを海の生き物が食べて死に絶えたり、それを食べた魚が人間の食料として体内に入ったりします。こうしたことが近所の川から始まっていることを伝えたいんです」とプレさん。
流れる水がもたらしてくれる癒やしと、そこにひそむ問題の怖さ。その両方を感じさせる2人の絵を見ると、自分の住む町を流れる川が、違って見えてくるはずです。
「桂川のプラスチック汚染」は4月19日(木)まで関西日仏学館(左京区)で展示中。両作家の作品も見ることができます。
「桂川のプラスチック汚染」ほか作品展