ちょっとした用事や通院のときなどに地元民の足となるバス。でも、そのバスが走らないために日常生活を不便に感じている人も…。そこで動き出しているのが、住民による、住民のための“地域限定バス”。東山区と山科区の取り組みを取材しました。
東山区今熊野は、寺社仏閣が点在する歴史ある土地柄。東大路通りは路線バスの運行ルートになっていますが、東山の山手の急な坂道、細道、曲がり道が続く住宅街はルートを外れています。
ここでバスを試験運行しているのは、昨年7月に設立された「今熊野生活支援あしの会」。地域内に事務所をかまえる京都急行バスの協力を受け、同10月から月1回、独自のルートを約45分かけて25人乗りのマイクロバスを走らせています。
取材に訪れたのは1月末、4回目の運行のときでした。
住宅街を抜け商店街へ回ると、会のメンバーが手作りした停留所で、重い荷物を持ったお客さんが乗車してきました。
「このバスに乗せてもらえるから、おいもを買ったの」とうれしそう。
この日は3便が循環。通院や買い物のため、年配の人を中心に80人以上が利用していました。
「年をとって足腰が弱くなると、ちょっとそこまででも出かけるのが大変。高齢化が進んでも、交通手段があれば生活しやすいでしょうし、出かける人が多くなります。仲間と助け合いながら、住んでいて良かったと思える今熊野にしたいです」と同会会長の福田光代さん。利用者の声にこたえて、停留所やルート、運行時間を何度も見直してきました。
「毎日運行するには行政の援助が必要。今年が正念場です!」
「山科は交通が不便やってよくいうでしょ?」と、山科区鏡山で「鏡山生活支援バス実行委員会」の事務局長を務める山二(やまに)健一さん。三条通りと五条通りにはさまれた学区の広い同地区では、最寄りの地下鉄の駅まで徒歩で30分ほどかかる場合も多いのだとか。主要な幹線道路にバスは走っているものの、「地区内を細かく行きかう公共交通機関、地下鉄へのアクセスへの要望は、地域の中で昔から挙がっていました」と山二さん。
昨年12月に立ち上げられた同実行委員会では、京都急行バスの協力のもと、先月初めて「ミニバス試乗運行」を実施。「バスが発車したとき? そら、うれしかったですわ」
当日は午前10時から午後3時まで、1時間に1便ずつ計6便、合計184人が乗車しました。
「ところがですな、満員で乗車できなかった人が50人ぐらいおられたんです。停留所に行列して待ってくれている姿がバスの中から見えたときは、申しわけなくて…」
現在、実行委員会では2月下旬の第2回試乗運行に向けて、調整を進めているそう。「坂道が多く、高齢化が進んでいる地域だけに、バスという生活の足をしっかり確保したい。住民の生活に合わせて走るバスが運行できるように、私らが動ける間に頑張りたいと思っています。山科で初めて住民主体で運行したバスとして、失敗はできません」と熱い思いを語ってくれました。