京都教育大学(伏見区深草)の正門を入り、右手の方向へと歩いていくと、クリーム色のレトロな雰囲気の建物が目に入ります。鳥のさえずりが聞こえる木立の中にたたずむここは、「まなびの森ミュージアム」。11月12日にオープンし、一般公開が始まりました。さて、どんなところでしょう?
まず気になるのが、近代洋風建築を思わせるその外観。以前は職員会館だったものを、今回改修したということですが、もとをたどればこの建物、明治30年にこの地に置かれた「陸軍第19旅団司令部」だったとか。そういえば深草は、太平洋戦争終戦まで軍事的要地だったところ。
「かつては軍人を乗せた馬や車両が、通りからこちらへと入ってきたのでしょう。そんな戦争の時代を建物から振り返ることも“まなび”のひとつであると考え、意匠を調査し、創建当時の姿に復元しました」と、館長の太田耕人(こうじん)さんは話します。
当時のままの古い石段をのぼると、左右に展示室が。美術作品、世界の楽器、発掘調査での出土品や藩札といった歴史的資料、生物の標本類や化石など…。規模は小さいながらも、さまざまな教科にわたる資料がコーナー別に展示されています。
中でも目を引くのは、人間の手足のミイラ。考古学者の吉村作治さんに鑑定を受けた結果、古代エジプト時代のものと判明したものです。
これらの展示物は、明治9年に創立された京都府師範学校に始まる同大学が、現在までの間に所蔵していた教材、教具など。平成18年から順次行った校舎の耐震工事の際に、それぞれの研究室を整理して集められたもので、特に理学科工作室からは大量の古い実験機器が発見されたそうです。そこで貴重なこれらの資料を保存し、「学ぶこと」に活用していこうと、同ミュージアムが作られることとなりました。
「一般の方に展示物を間近で見ていただくとともに、学生たちの教育活動の場としても機能します。例えばパンフレットの解説文などは学生が作成したもの。また今後、年に2回ぐらいは企画展を開催していく予定ですが、それも学生たちと一緒に作り上げていきます」(太田さん)
現在、開館記念企画展として、「理化学実験器具の世界」を開催中。明治から戦後にかけて集められた古い理化学実験器具約60点を一堂に見ることができます。動かせるものについては、学芸員による実演もあるとか。
また、学内にある多種多様な樹木の紹介パンフレットも正門受付に置いてあります。このミュージアムを訪れるとともに学内を散策し、学びの一日を楽しんでみてはいかがですか?