「こんにちは」。ちょっと重いガラス戸を開けると、少し暗くて、静かな雰囲気が漂っています。ヨソのお宅、しかも貴重な建物におじゃまするとあって、ちょっぴり身がひきしまります。
「親子会」は、その名の通り、親子を対象にした催し。参加者は、これまでに建具替えを手伝ったり、祇園祭の「二階囃子(ばやし)」を聴いたり、お盆には青竹を割ってそうめん流しをするなど、季節ごとの京町家の暮らしを体験してきました。
「町家の暮らしを知るというと、お勉強になりがちですけど、ひとときを過ごしてもらうだけのことなんですよ」と秦めぐみさん。この日は、4組12人が参加。子どもたちは、うれしそうに玄関を上がってきました。
さて、この日は、まずはだしになり、畳の間に雑巾がけ。その後は、ぬか袋で板の間みがき。お月見団子も作ります。
「雑巾をぎゅーっと固く絞って、畳の線にそってふくのよ」「木綿の袋にぬかを入れて、板の間をこうやってみがくと、ぬかの脂分で、ほら光ってくるでしょ?」
めぐみさんの話を真剣に聞いていた子どもたちは、店の間、玄関の間、茶の間、中の間、座敷と次々に拭き上げていきます。拭きおえた畳の上を記者も素足で歩いてみましたが、その気持ちいいこと! 板の間もキュッキュッと音がします。
次はお月見団子作り。子どもたちの中でも年長のお姉さんを中心に挑戦。各自でお盆に盛り付け、花器にススキを生け、掃除したばかりの座敷で奥庭を眺めながら、お茶の時間を楽しみました。
参加者の今田さん親子は、大阪から毎回参加するほどの秦家ファン。その魅力を小学4年生の舞子ちゃんに尋ねると、「部屋が楽しいし、落ち着けるから好きです」。
めぐみさんと一緒に親子会を運営する星野祐美子さんは、「生活の知恵や、季節を大切にする暮らし方など、ここで体験したことを心に持って、子どもたちが大人になってくれたらうれしい」。
敷居が高いイメージを抱きがちな京町家ですが、秦さんは「来てみたら、普通の家。意外と快適で、手間のかかることが楽しかったりするんです」。確かに、畳拭きは意外なほど盛り上がりましたね! 建物の雰囲気だけではなく、手触りや時間の流れも感じることができました。
次回は「炭火で楽しむお茶時間」。10月22日(土)午後2時~。参加費大人1000円(小学生以下無料)、定員親子10組、前日までに要予約。詳しくは秦家のホームページ=http://www.hata-ke.jp=を参照。