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「深草うちわ技術継承プロジェクト」動き出す

「深草うちわ」って、聞いたことがありますか? 竹の産地である深草では、かつてさかんにうちわが生産されていたそう。今回、深草で、この深草うちわをよみがえらせようというプロジェクトが始動しました。香川県丸亀市から、うちわ職人を招いて行われたワークショップにお邪魔してきましたよ。撮影:橋本正樹

中央が杉井さん、その右が住井さん、原井川春子さん、後列右が邦昭さん。今回うちわ作りを学んだ「竹と緑」のメンバー、伏見区役所深草支所職員とともに

「深草うちわ」の特徴は、骨組みが1本の竹からなる点。竹の節目を中心に、上部を40本以上に裂き、下部を柄としています。柄と骨が分離しないため、丈夫なのだとか。

現在、この「深草うちわ」を販売しているのは、創業寛永元年の老舗うちわ店「小丸屋 住井」(左京区岡崎)。芸舞妓(まいこ)が夏のあいさつに得意先に配る、名入りの「京丸うちわ」の店としても有名です。

「当店のうちわ作りが始まったのは400年ほど前。当時、深草から御所勤めをしていた先祖が、中国などから伝わったうちわを深草の真竹で作りなさいという勅命を受けたと聞いています」と、10代目女将・住井啓子さん。当時の小丸屋当主の歌仲間であった瑞光寺(深草)の開祖・元政のアイデアで、茶道具の棗(なつめ)の形をしたものが生まれ、オリジナル製品として流行したのだそうです。

しかし明治には「小丸屋」も洛中に移り、伏見にはうちわ店がなくなってしまいます。「現在販売している深草うちわの骨組みは、当店専属の職人さんが丸亀で作ってくださっているもの。私としては、深草の真竹で、深草の職人さんが作る、本来の“深草うちわ”をもう一度、という願いがあるのです」(住井さん)

そこで声をかけたのが、深草で竹林保全活動を行うNPO法人「竹と緑」。住井さんと同理事長の杉井正浩さんが、4年前に知り合ったのがきっかけでした。

〈左〉原井川さん(手前から2人目)の指導のもと、専用の機械を使って竹を厚さ約1ミリ(!)に裂くメンバー
〈右〉裂いた竹に糸を渡していく春子さん。素早い手つきにびっくり!

使用するのは深草の竹

これが“元政型”とも呼ばれた、棗形の深草うちわ。平成12年の「都をどり」の舞台用小道具として復元され、以後同店で販売もされています

「現在深草に生えているのは、ほとんどが孟(もう)宗竹。真竹を深草に植えるところから始めたんですよ」と杉井さん。真竹は3~4年でうちわに使えるようになるそう。

「6人のメンバーが2日間のワークショップに参加し、ひととおりの行程を実際に見せていただいて、あとはビデオなどで学んだり、四国に出向いて教えていただいたり。最終的には、自分たちですいた竹和紙を張ったものも、授産施設などを通して販売できれば、と考えています」

それにしても、丸亀から来たうちわ職人の原井川邦昭さん・春子さん夫妻の作業を見ていると、とても難しそう。職人技を習得するには、相当時間がかかりそうですが。「私は7年くらい、主人も60歳くらいから始めたので、10年くらいなんですよ」と春子さんに聞いて、びっくり。

「丸亀でもうちわ職人は減っており、市や県が育成講座を行っています。私たちはそれがきっかけで始めたのです」(春子さん)。それがこうしてプロになっているのだから、60代が多い「竹と緑」のメンバーも挑戦しがいがありそう!

「将来この活動から、一人でも多くうちわ職人になれば」と杉井さん。早く彼らが深草の竹で作った「深草うちわ」が見たいですね。

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