伏見区・深草東部にある大岩山。長い間、ごみの不法投棄が問題だったこの山に、地域の人々と京都市などが力を合わせて、散策路を完成させました。これから山歩きが気持ちよい季節、このコースを歩いてみませんか。
山頂に着いたとたん、思わず「うわ~」と声をあげてしまった記者。新しいウッドデッキの展望台からは、京都市街や愛宕山を見渡す眺望が。
「ほら、あそこにうっすら見えるビル群が梅田ですよ」と、案内してくれた伏見区役所深草支所まちづくり推進課の安田勇次さん。何と、大阪まで見えるとは! 「映画やドラマの撮影のオファーも何件かいただいています」とのこと。地元の自慢のスポットですね。
ここがかつてはゴミであふれかえっていたとは信じられません。
深草支所で、かつての山の写真(右上)を見せてもらい、その惨状に絶句。まるでゴミだめですね。
聞けば、「近隣の方々が長年困っておられましたが、民間の山なので、市もなかなか動きを取れずにいました」とのこと。
平成20年に、深草地域で竹林などの環境保全を通してまちづくりを行うNPO法人「京都・深草ふれあい隊 竹と緑」や、地元の農協、地域住民や各種団体、京都教育大学や龍谷大学、伏見工業高校などが集結し、京都市と「わがまち深草・大岩山ワークショップ」を立ち上げ、里山の再生に挑戦したそうです。
ワークショップでは方針を話し合うとともに、地域住民も交えた一斉清掃を数回実施。市長の門川大作さんも含め毎回100~200人の参加者があり、100tを超えるゴミが撤去されたのだとか!
そのほか、伏見工業高校や深草中学校、藤森中学校の学生たちは環境美化を呼びかける看板を作成。現在もそれらが立っており、「森の美術館」とも言われています。
やがて、「頂上に展望所を」という案が浮上。眺望を良くするため、雑木の整理なども行われました。
「昨年度から大岩山の活動の中心を担っている『ふかくさ自然環境再生ネットワーク推進委員会』の代表が京都教育大学の武田一郎教授だったご縁で、作業には運動部に所属する屈強な学生さんたちにも大勢ご参加いただきました」。地元有志の人々と深草支所で「深草トレイル(自然散策コース・歴史探索コース)」という散策路を完成させた経験も生かされました。
こうして昨年3月に展望所が設置され、今年1月には大岩神社参道と展望所をつなぐ道も整備。
今回、道しるべなど柵の最終整備を経て、「完成イベント」が実施されます(表参照)。問い合わせは深草支所まちづくり推進課=TEL:075(642)3203=へ。
今回整備されたのは、大岩神社の鳥居を始点とし、参道を抜けて山頂へ出るコース。所要時間は片道約20分ほどです。大岩神社は、肺結核に御利益があるといわれ、かつては全国からの参拝者が多かったそうです。
現在も病気回復を願う人が訪れるこちら。参拝の際にぜひ見ておきたいのが、堂本印象作の、大小2つの鳥居です。
「堂本先生のお母さまがよくこちらにお参りくださっていたご縁で作ってくださったのです。ここだけにしかないようなものを、とお願いしました」と同神社宮司の辻さん。その言葉通り、西洋風の装飾が掘られた珍しい鳥居です。