向日市にある西ノ岡中学校の教室には、地域で活躍する消防士や寿司職人、ベビーシッター…、さまざまな人が“講師”として登場します。学校全体で力を入れるこの活動、どんな思いがあるのでしょう。
「西ノ岡中学校では、最近意欲的に取り組んでいることがあります。それは、地域の人をゲスト講師とした特別授業。「たとえば、1年生が“働くこと”を学ぶ授業では、お寿司屋さんや消防士さんなどを呼んで、実際の仕事について話してもらいました」と、校長の盛永俊弘さん。
どうして地域の人が講師に?「子どもたちへの教育活動というのは、学校だけでするものじゃない。地域との協力があってこそだと考えています。『働くことは大切』と教師が話すより、地域の方に実体験を通しての具体的な話を聞いたり、いきいきした姿を見せてもらったりすることのほうが、子どもたちにとってプラスになると思うのです」
ほかにも性教育の授業で妊婦さんを招き、生徒がおなかを触らせてもらったりも。「このような体験からの学びを重要視するのは全国的な流れでもあるのですよ」と盛永さん。実は公立中学校で来年4月から導入される教育のガイドライン「新学習指導要領」では、教育方法に“体験”を取り入れることが推奨されているのだそう。
沐浴体験で実感「赤ちゃんって重い!」
この日は、2年生の技術家庭科でゲスト講師を招いた授業が。生徒の輪の中心では、赤ちゃんの人形を使った沐浴(もくよく)が行われています。
「後でみんなにもやってもらうから、しっかり見ててな」と沐浴の手本を見せるのは、乙訓地域で保育事業を行うグループ「せきゅりてぃー・ぶらんけっと」の代表でベビーシッターの田中ゆかさんとスタッフ。「じゃあ次、やってみよか」と、生徒たちに手際よく沐浴の手順を教えていきます。
講習では、重さ3キロ、肌の感触や関節なども新生児に近づけた“赤ちゃん”人形を使用。「そうそう、首はしっかり支えて」「顔はやさしくふいてあげてな~」「男の子は手が大きいからパパになったらしてあげてな」とスタッフ。最初は恥ずかしそうにしていた生徒たちからも、「めっちゃ重い~」「持ち方これで合ってる?」と次々に声が上がります。
そんな生徒の姿を見守っているのは、技術家庭科担当教諭の中辻佳子さん。「保育や住まいをテーマとする授業の中で、生徒が乳幼児の生命をリアルに学べる機会を模索していたんです」。そこに、地域との交流活動にも力を入れる同グループから「沐浴体験」の提案があり、実現したそう。
授業終了後、田中さんからは、「この体験が小さな命に関心を持つ機会になったり、いつか親になったときに少しでも役立ててもらえたらうれしいですね」と。中辻さんは「赤ちゃんの体は“重い”ということを感じられたようです。命の重さも一緒に感じられたのではないでしょうか。社会には、赤ちゃんや高齢者、障害者などいろんな人がいます。さまざまな人と触れ合うことで、自分以外の立場になったときの視点を育てていきたい」と話します。
今後も、校長と先生が一丸となって、地域と連携した体験授業の計画を立てていくそうですよ。