琉球という国があった
上里隆史、(写真)富山義則、(絵)一ノ関圭 福音館書店・1430円
沖縄が別の国だったころの近くて遠い歴史と文化
飛行機に乗れば1時間ちょっと。国道沿いにはコンビニもドラッグストアも同じ顔をして並んでいる。同じ日本なのだからあたりまえ。そんなに遠いところではない。だが、四十数年前まで行き来するにはパスポートが必要だった。そう考えるとやはり遠い場所に感じる。近いのか、遠いのか。
本書をひらけば沖縄が遠い遠い別の国だったころが見えてくる。琉球という国があったころ。日本でもなく、中国でもなく、アジアの一員として成り立っていた国があった。その中心には首里城があり、港にはさまざまな国の人が行き交っていた。いま、同じ国として何の苦もなく訪れることのできる町の、近くて遠い歴史を改めて感じる。
【紹介者】
開風社 待賢ブックセンター 鳥居貴彦さん
開風社 待賢ブックセンター 鳥居貴彦さん
動物裁判 西欧中世・正義のコスモス
池上俊一 講談社現代新書・836円
被告は動物…! 西欧中世で実在した裁判の背景とは
この本のタイトルから動物を擬人化した物語を想像される方が多いのでは。しかしこの本は実際に中世のヨーロッパで行われていた、動物(豚や牛、昆虫など)を被告とした動物裁判のことを考察したものです。信じられないかもしれませんが当時は大真面目にそんな裁判が行われていたのです。なぜそんな動物裁判なんてくだらないことが行われていたのか、当時の法や司法制度だけでなく、自然と人間の関係の変化が大きく関わっているのです。自然を畏怖していた時代から、動物裁判があった自然を支配・搾取する時代、そして現代の保護する時代へと。動物が原告となり、人間が訴えられる現代にこそ読んでもらいたい一冊。
【紹介者】
エレファントファクトリーコーヒー 畑啓人さん
エレファントファクトリーコーヒー 畑啓人さん
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