巡礼の約束
2月29日(土)から京都シネマで公開
悲しみやわだかまりを超えて心を近づける家族の感動物語
日本で初めて商業公開されたチベット映画「草原の河」の監督ソンタルジャが、今度も映像力がきわだつ秀作を届けてくれた。人の心の雪解けを描くような、濃密で繊細なタッチがみごとだ。
ある日、妻のウォマは、ひとりで聖地ラサへの巡礼に出ることを決意した。彼女のことを心配した夫のロルジェと、前夫との息子ノルウが、後を追ってくる。だが、ウォマは、重大な秘密を胸の中に抱え込んでいた…。
「五体投地」という、気の遠くなるような巡礼の作法に驚かされる。強い祈りと意志、体力がなければ、やり通せない過酷な旅である。チベットの自然豊かな風景と、手を差し伸べてくれる他人のやさしさが旅の伴奏となるが、思わぬ悲しい展開となってゆく。だが、本当の物語はここからだ。血のつながらない父と子、さらに母を亡くした子ロバが加わって、感動のラストシーンへと。
ロルジェ役に、世界的に有名な歌手でもあるヨンジョンジャ。子役の目ヂカラにも注目。音だけのエンディングが深い余韻を与えてくれる。
(ライター 宮田彩未 )