幸福路のチー
11月29日から京都シネマで公開
激動の台湾史に重ねて、一人の女性の生を鮮やかに描く
これまでアニメ不毛の地といわれてきた台湾から、世界で高い評価を得た作品が日本上陸! 監督は、京都大学に留学して映画理論を学んだ経験を持つソン・シンイン。彼女自身の半生を基盤にしたヒロイン像に、国境を超えて共感した。
主人公は1975年生まれのチー。アメリカで暮らしていたが、祖母が亡くなったため、台湾へ里帰りする。なつかしい町・幸福路では、年老いた両親が迎えてくれたが、チーの思いは、ここで過ごした幼少期や少女時代に戻っていく。青い目の親友ベティや、わんぱく小僧のシェン・エン、少数民族のアミ族である祖母。あの頃、望んだ場所に自分は立っているかとチーは問い始める…。
戒厳令の時代、台湾語禁止の学校教育、台湾大地震によって失ったもの、アメリカ生活で抱えた不安などがチーの胸を往来する。彼女はある選択をしなければならないが、とことん悩んだ末の未来に向けた決意は、とても爽やかだ。きれいなパステルカラーが印象的で、おとなの女性向けともいえるアニメの秀作。
(ライター 宮田彩未 )