劇団四季ミュージカル「ノートルダムの鐘」
2020年1月19日(日)まで京都劇場で上演中
全身全霊で鳴らす鐘の音が美しく哀しく心に響く
ノートルダム寺院の聖堂内をイメージした舞台美術と、聖歌隊の歌声を背景に、物語を進行させていく舞台は、まるで中世の典礼劇のような荘厳さ。これは、フランスの文豪ビクトル・ユゴーの原作に発想を得た、ミュージカルである。
15世紀末のパリ。ノートルダム大聖堂の聖職者フロローに育てられ、その醜い容貌のため、鐘楼に閉じ込められて生きてきたカジモドは、祭りの日、初めて触れた外のにぎわいの中で、ジプシーの踊り子エスメラルダに恋をするが…。
入り組んだ愛憎と宿命との対峙(たいじ)を描く物語。「美女と野獣」や「ライオンキング」など、これまでのディズニー作品とは、やや趣が違い、現実社会の差別や、いじめの問題とも重なる、シリアスなメッセージも伝わってくる。
ラストシーンの語りは、衝撃的ながら暖かく胸を震えさせる。過酷な運命に翻弄(ほんろう)されるカジモドが、祈りを込めて全身全霊で鐘を鳴らすシーンは、たとえようもなく美しく哀しく、見る者の心に響く。
(文筆業 あさかよしこ )