あなたの名前を呼べたなら
8月17日(土)から京都シネマで公開
根強く残る階級の壁を超え、少しずつ近づく心と心
インドの大都会ムンバイ。ヒロインのラトナは、結婚後4カ月で夫を病気で亡くし、今は住み込みのメイドとして働いている。一方、雇い主のアシュヴィンは、婚約者の浮気が発覚して結婚が破談、傷ついた心を抱く優しい青年だった。ファッションデザイナーになりたいというラトナの夢を知ったアシュヴィンは、さりげなく応援の手を差し伸べるのだったが…。
階級社会のインドでは、現代でも、雇い主とメイドがこのような関係を結ぶのは難しいという。ムンバイ出身のロヘナ・ゲラ監督は、それでもあえてこの美しい物語を丁寧なタッチで織り上げた。それは、同じ女性であるラトナが、心の奥底で大切に温めている希望を形にして、因習の理不尽さを見せたかったからだろう。ラストシーン、アシュヴィンからの電話に応えるラトナの短いことばはとても感動的だ。
せりふは非常に少ないが、ラトナ役のティロタマ・ショームと、アルヴィンを演じるヴィヴェーク・ゴーンバルの間に漂う空気の濃密さを、じっくり味わってほしい。
(ライター 宮田彩未 )