パリ、嘘つきな恋｜試写室・劇場から

口から出まかせの嘘で窮地に！　熟年男の恋のゆくえは？

真実を言えば、自分の価値を下げ、大切な人を失うかもしれない。それが怖くて、嘘に嘘を重ね、ますます泥沼に落ちてゆく人がいる。この主人公もまさにそう。

パリで大手シューズの代理店を率いるジョスランは、女性に目がない軽薄男。亡くなった母の車椅子に座っている時、突然現れた美しいジュリーの気を引こうと、車椅子生活だと嘘をついてしまう。ジュリーから姉のフロランスを紹介されるが、驚いたことに、フロランスは本当に車椅子が必要な身だった…。

監督・脚本・主演を務めたフランク・デュボスクはコメディアンとしても活躍した人で、思わずくすりと笑わせるツボの押さえ方が絶妙。まいた種を刈り取る勇気が出ないジョスランと、バイオリニストという仕事を持ち、車椅子テニスもこなす明るいフロランスとの対比も鮮やか。胸がきゅんと鳴る甘酸っぱいシーンや、隠されていた“ある真実”が印象に残る。フロランス役のアレクサンドラ・ラミーが実に魅力的で、本作はフランス本国で大ヒットした。

（ライター 宮田彩未　 ）