シネマ歌舞伎「沓手鳥孤城落月/楊貴妃」
1月12日(土)からMOVIX京都で公開
美しさに、かなしみが重なる。玉三郎が描く二つの愛の物語。
昨年、南座が新開場となったのはうれしいことだ。さて、新春は、坂東玉三郎主演豪華二本立てを映画館のスクリーンで味わってみては。
坪内逍遥作の「沓手鳥孤城落月(ほととぎすこじょうのらくげつ)」は秀吉の没後、豊臣家存亡の危機が迫る中、周囲の裏切りで正気を失いつつも、息子・秀頼への情愛を示す淀の方が主人公。怪物的な激しさを持つ女性がにじませる無念や悲哀の色を、玉三郎は圧倒的な演技で見せる。
続く「楊貴妃」は、夢枕獏原作の幽玄的な舞踊劇。他界した楊貴妃を忘れられない玄宗皇帝の命を受け、方士という男が楊貴妃の魂を呼び出す。姿を現した楊貴妃は永遠の愛の思い出を舞踊として語り、方士にある物を手渡すのだが、玉三郎のあでやかな姿にこもる切なさが胸を打つ。
いずれも平成29年歌舞伎座での公演から。京都・樂家の茶室や歌舞伎座の中での特別映像では、玉三郎自身による作品解説もあり、歌舞伎初心者でも理解しやすくなっている。中村七之助、市川中車ほか共演。
(ライター 宮田彩未 )