新版 宮澤賢治 愛のうた
澤口たまみ 夕書房・1944円
詩や童話から読み解く、賢治の知られざる恋人の姿
「なべてはしけく よそほひて」という文語詩をご存じでしょうか。人目を忍んだ恋人とのあい引きを描く詩には、宮澤賢治の知られざる恋人の姿が隠されていました。
生涯独身のまま他界した賢治には、早くに他界した妹に思いを寄せていた、同性愛的な傾向があったなど、半ば神格化されたエピソードがつきまといます。しかし本書は、そんな賢治に恋人がいたことを数々の詩や童話から読み解きます。SP盤を集めてはコンサートを開き、熱心に音楽の美しさを説く。そこで出会った恋人と周囲の目を気にしながら密会を重ね、実らぬ関係に煩悶(はんもん)する人間・宮澤賢治の姿に、より一層親近感を感じることでしょう。
【紹介者】
誠光社 堀部篤史さん
誠光社 堀部篤史さん
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