未必のマクベス
早瀬耕 ハヤカワ文庫JA・1080円
言葉としては現れないのに、確かに伝わる恋愛感情
IT企業・Jプロトコルの社員として、東南アジアを中心にICカードの販売に携わる中井。
バンコクで同僚と商談を成功させた帰り、澳門(マカオ)の娼婦(しょうふ)から「王として旅を続けなくてはならない」と予言めいた言葉をかけられる。その言葉の真相を追うように、中井は何かをつかもうと動き出す。
「澳門」「雲呑麺(わんたんめん)」「科白(せりふ)」「昨夕」。物語のなかには、これらの言葉が頻繁に登場するのが目に留まる。
初恋の物語でもあるのに恋愛感情は具体的な言葉として現れない、ある意味歯がゆさも感じつつ、中毒性をも感じさせる作品。一気に引きこまれます。
【紹介者】
大垣書店四条店 小林素紀さん
大垣書店四条店 小林素紀さん
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