四月の永い夢
5月12日(土)から京都出町座で公開
モスクワ国際映画祭でW受賞! 注目の若手監督による一作
3年前の春に恋人を突然亡くした27歳の初海は、そば屋でアルバイトをしながら静かな日々を送っていた。そんな日常に波風を立てたのが、恋人だった人の母から送られてきた手紙。そこには、初海に宛てた彼からの最後の手紙が同封されていたのだが…。
おだやかだった日常は、封印してきた何かを表に出そうとするかのように、さまざまな変化を見せ始める。初海に思いを寄せる若者や、教職に就いていた頃の教え子の登場、そば屋の閉店などが、初海を突き動かそうとするが、彼女は同じ地点にしがみついていたいかのようだ。物語の終盤、元恋人の実家で過ごし、やっと本当のことを口にできる初海なのだった。
平成2年生まれで昭和のレトロ感が大好きだという中川龍太郎監督が脚本も担当。詩人でもある彼による抑制のきいたせりふやノスタルジックな空気感にひかれる。みずみずしい感性と老練ともいえる構築力に驚いた。朝倉あき、三浦貴大ほか出演。高橋惠子演じる元恋人の母親の決めぜりふが深い印象を残す。
(ライター 宮田彩未 )