さよなら、僕のマンハッタン｜試写室・劇場から

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大人の世界をのぞいた青年の迷い道を街の風景に重ねる

「（500）日のサマー」の監督マーク・ウェブが、ニューヨークへの愛をこめて描いた青春もの。苦味の強いチョコレートのような味わいにユーモアやペーソスも加わって、ラストまで楽しませてくれる。

青年トーマスは安アパートで１人暮らしを始めたが、恋もやりたいことも中途半端。アパートの隣人でなぞめいた中年男に声をかけられ、自分の胸の内をさらけ出していた。そんなある日、父が見知らぬ女性とデートする現場に出くわし…。

物語は意外な展開となり、トーマスの日常は暴走化していく。かつて刺激的だったニューヨークの街が今は退屈だと思っている青年は、新しい自分の現実に飛びつき、ますます混迷を深くする。「青春とはけしてカッコいいもんじゃないなあ」と改めて感じつつ、主人公に共感を覚えた。趣のあるニューヨークの風景がみごとに生かされ、音楽の使い方も秀逸だ。新星カラム・ターナー主演。ジェフ・ブリッジスほか名優たちが適材適所で登場し、隠されていた真実の扉へと導く。

（ライター 宮田彩未　 ）