はじまりの街
11月18日(土)から京都シネマで公開
母と息子の再出発を見つめる イタリア映画の秀作
DV(家庭内暴力)は被害者に大きな心の傷を与える。この映画のアンナも夫の仕打ちに傷つき、13歳の息子ヴァレリオを連れて、慣れ親しんだローマから、親友カルラが暮らすトリノへ逃れる。優しく迎えてくれたカルラのもとで新生活を始めるが、仕事を探さねばならないし、思春期の息子のいら立ちにも対応せねばならない。
新しい環境になじんでゆくには、周囲の人々とのふれあいが強い支えとなる。気配りのきくカルラをはじめ、元サッカー選手の料理店の主、ヴァレリオが恋に似た思いを抱くストリートガールなど、魅力的な人物がさりげなく寄り添ってくる。そして、不安でいっぱいだった“はじめての街”が親子にとって“はじまりの街”になる時、見ている私たちの心もゆるやかにとけていく。
イタリアを代表する2人の女優、マルゲリータ・ブイとヴァレリア・ゴリーノの繊細な演技に魅せられる。最後に流れるシャーリー・バッシーの歌は感動的で力強い応援歌のようだ。イヴァーノ・デ・マッテオ監督。
(ライター 宮田彩未 )