十年後のこと
東浩紀、絲山秋子ほか 河出書房新社・1728円
35人の作家が描き出す、それぞれの〝十年〟の物語
本書に収録されているのは、35人の作家が生み出す、35の不思議な〝十年〟の物語。
誰のところにも、平等に訪れるはずの十年。しかしその年月は、なんとさまざまなことだろう。十年かけて届いた手紙の物語に、成功したはずの十年の物語、人生最後の十年を自分らしく生きようとする女性の物語など、それぞれの速度と濃度で過ぎる十年に少し怖くなる。印象的なのは、雪舟えまさんの「渡りに月の船」に登場する、「思えば長いこと、いっしょにいる選択をしつづけてるなあ。約束じゃなく。」というセリフ。十年という無数の〝いま〟を積み重ねること。日常にひそむ、毎日の小さな決断の切実さに気づかされる1冊。
【紹介者】
マヤルカ古書店 なかむらあきこさん
マヤルカ古書店 なかむらあきこさん
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