劇団四季ミュージカル「ノートルダムの鐘」
9月28日(木)まで京都劇場にて上演中
理不尽な社会への問いかけが、見る者の魂を震わせる
フランスの文豪、ビクトル・ユゴー原作「ノートルダム・ド・パリ」に発想を得た、劇団四季の最新ミュージカル。
15世紀末のパリ。ノートルダム大聖堂の聖職者フロローに育てられ、その醜い容貌から、聖堂に閉じ込められて生きてきたカジモドは、祭りの日、初めて触れた外のにぎわいの中で、ジプシーの踊り子エスメラルダに恋をするが…。
入り組んだ愛憎と、登場人物たちが背負わなければならなかった光と闇とを、叙情的に描き出すこの舞台は、聖堂内をイメージした舞台美術と聖歌隊の歌声を背景に、まるで中世の典礼劇のような荘厳さで物語を進行させていく。
理不尽な社会の中で「私たちは何者?」と問いかけるシリアスなテーマは、まさに現実社会の差別やいじめの問題とも重なり、見る者の魂を震わせる。そして何よりも、過酷な運命に翻弄(ほんろう)されながらも、勇気と真心を貫いたカジモドが、祈りをこめて、全身で聖堂の鐘を鳴らすシーンは、たとえようもなく哀しく美しい。
(文筆業 あさかよしこ )