残像
7月22日(土)から京都シネマで公開
厳しい弾圧のもとで信念を貫く その強さ、その孤独の深さ
昨年、90歳でこの世を去ったポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督の遺作である。ここに描かれた実在の画家は、まるで彼の分身のようであり、作品にこめられた強烈なメッセージが、見た後もキリキリと胸を突いてくるようだ。
第2次世界大戦後のポーランドは、ソビエト連邦の影響下にあった。前衛画家として大学教授として名声と尊敬をかちえていたストゥシェミンスキだったが、社会主義政権の方針に批判的な彼は、次第に追いつめられていく。職を失い、生活の糧や画材も手に入れるのが難しくなり…。
表現の自由を侵され、望むような活動をできない芸術家の苦悩とかっとう。体制にこびれば、楽なのだろうが、それをしない。あえてしんどい道を選び、家族との溝までつくってしまっても、そのようにして闘い続ける彼の人生をじっと見つめていた。そして、彼のような人が現代にもいることを思っていた。ストゥシェミンスキを演じたボグスワフ・リンダの、高潔ともいえるまなざしの深さが印象的だ。
(ライター 宮田彩未 )