マンチェスター・バイ・ザ・シー
6月10日(土)から京都シネマで公開
人生を一度投げ出した男が、心の穴を埋めていく過程に感動
今年のアカデミー賞で主演男優賞と脚本賞に輝いた、胸に残る秀作。兄のベン・アフレックと比べられ、少々影が薄いといわれていたケイシー・アフレックだが、どん底から立ち上がろうとする人物を繊細に演じ、みごと快挙を果たした。
題名のマンチェスター・バイ・ザ・シーとは、アメリカのマサチューセッツ州にある土地の名で、ボストンで便利屋として働く主人公リーの故郷。突然の兄の死により、彼は二度と戻りたくないと思っていた故郷で、甥(おい)パトリックの後見人としての務めも果たさねばならなくなる。そこで過ごすうち、過去の悲劇がよみがえり…。
リーの現在と過去が入り組んだ物語には、意外にもユーモアの断片があちこちにあって、人生の重さと軽さは裏表だなと感じさせる。過去にとらわれているリーと、青春を謳歌(おうか)しているパトリックの対比など、監督ケネス・ロナーガンによる脚本は出色、人を見つめる目の温かさもにじみ出ている。ミシェル・ウィリアムズ、カイル・チャンドラーほか共演。
(ライター 宮田彩未 )