俳優 梅沢富美男さん
僕らの世代はまだ人生半ば。舞台もテレビも新たな挑戦を
華やかな女形の艶姿に、粋な風情の舞。その美しさから“下町の玉三郎”として人気を博してきた俳優・梅沢富美男さん。ヒット曲「夢芝居」で、NHK紅白歌合戦にも出場しました。いま66歳を迎え、多くのテレビ番組に出演。5月には50本近くの番組出演があるそう。そして、6月には、大阪の新歌舞伎座で特別公演と、まさに大忙しの日々です。
「今の少年少女たちのことを、ゆとり世代と呼んでいますけど、僕は大間違いだと思っているんです。ゆとり世代は、むしろ僕らの世代、ジージとバーバの世代です。明治から昭和へと引き継がれた教育をたっぷり受け、戦後の高度成長に漬かり、バブルを経て、いい給料、いいボーナス、そして年金を手にし、今、ゆとりのある生活を送っている人たちなわけです。でも、せっかく自分たちの体験や学んできたことを、子供世代、孫世代に伝える厳しさを持たず、若者を叱れる大人が、少なくなってしまっていることが残念ですね」
このところ、梅沢さんの、こんな切れ味の良いコメントが、話題を呼んでいます。
同時に、テレビ番組の中で挑戦する俳句、料理、生け花などが、名人の域に迫る“才能あり”と評価されることも多々。
「例えば俳句。自分をラッキーだと思うのは、お芝居のセリフの中から、人として大切な事柄を学ぶことが多かったんですね。それと、役者の持つ妄想力が功を奏したのかも」
60代後半になった梅沢さんが、これまで以上の情熱をもっていろんな仕事に挑めるのは、半世紀以上に及ぶ役者道から得た、ブレない底力があるから。辛口といわれるコメントが、耳に小気味よく響くのも、そんな人間としての奥行きに、裏打ちされた説得力があるからなのかもしれません。
いつまでも変わらない。大切なことだと思います
女形になったきっかけは、「兄の武生と一緒に『矢切の渡し』を踊ることになり、急きょ、独学で女形の化粧をしてみたら、俺、こんなに奇麗になるんだって、自分でもビックリしちゃって(笑)。これが、今の僕につながる大きなチャンスだったのでしょうね」
以来、舞台をはじめ、映画やテレビへと活躍の場が広がっていきます。中でも、時代劇の多い梅沢さんにとって「歴史ある映画の街・京都は、“聖地”」といいます。
「いちげんさんお断りなどといわれますが、僕も、入れなかった店もあります。それが京都。京都ならではの風習や価値観は、ずっと大事に守っていくべきだと思います」
6月には、大阪の新歌舞伎座で梅沢富美男劇団「梅沢富美男・田川寿美 特別公演」を開催。
「歌舞伎の人気演目『勧進帳』を、笑いもある新しい人情ものとして披露します。そして歌も。田川さんと僕のオンステージです。続く梅沢の十八番、華の舞踊絵巻に今回は、華麗な花魁(おいらん)道中が加わります。かなりぜいたくな舞台づくり、お楽しみいただけると思いますよ」
そんな美を極める梅沢さんから“大人タノシ世代”の女性にメッセージを─。
「いくつになっても、どんなときでも、自分が“女である”という意識を持つことが大切。日ごろからオシャレにも気を配って、機嫌よく過ごしていると、背筋も伸びますし、若々しさをキープできると思いますよ。いつだって、女性は見られていますから」
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