夢十夜
漫画:近藤ようこ、原作:夏目漱石 岩波書店・1404円
漫画に描き出された、夏目漱石の10の夢の世界へ
「こんな夢を見た」から始まる、10の夢物語。夏目漱石が書いた不可思議で奇妙なこの掌(しょう)編集を、伝説の漫画雑誌「ガロ」でデビューして以来、人間の心理を細やかに描写し、歴史的な題材も描いてきた近藤ようこさんが漫画化しました。
ファンタジックなものや、怪談めいたもの、少しとぼけたようなもの、短いながらも一話一話の魅力があるのですが、個人的には、近藤ようこさんの描き出した、明治以前の深い「暗闇」に引かれます。夜の闇、部屋の隅の闇、心の闇、暗い海など、暗闇があるからこそ際立つ人間を漱石が、近藤さんが垣間見させてくれます。初夏のうたた寝にこんな夢を見るかもしれません。
【紹介者】
古書ダンデライオン 中村明裕さん
古書ダンデライオン 中村明裕さん
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