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試写室・劇場から

永い言い訳

10月14日(金)からTOHOシネマズ二条、京都シネマで公開

©2016「永い言い訳」製作委員会

身近な人を失うという不幸が、やがて新しい光を見つけるまで

人の本質は変わらないなあと思うことは多いのだが、何かがきっかけで少しずつ、あるいは劇的に良い方向に変わることもあるのではないか。それがいわゆる“成長”と呼ばれることであり、人の持つ可能性の証しなのかもしれない。

作家の幸夫は、美容室を経営する妻の夏子とふたり暮らし。結婚生活は20年間に及び、相手を思いやる気持ちもうせていた。ある日、親友のゆきと共に夏子はスキー旅行に出かけたのだが、バスの事故でふたりとも亡くなってしまう。ひょんなことから、幸夫はゆきの子供たちの面倒をみることになり…。

冒頭、夏子が幸夫の髪を切る場面では、幸夫のごう慢さがびんびんと伝わってくる。その言動は妻に対する負い目の裏返しなのだ。そして映画の最後、妻のハサミを手に取る幸夫が映される。幸夫がそこへたどり着くまでには、ゆきの子供たちと過ごす慣れない時間や、妻が心に秘めていた衝撃的な真実など、ごう慢さをはぎ取るための試練が必要だった。

名作「ゆれる」の西川美和監督は、登場人物たちの心のひだを丁寧になぞり、彼らの変化がもたらす希望を、見る者に差し出す。音楽の使い方も繊細だ。主演は本木雅弘。竹原ピストルが、ゆきの夫役で妙味のある演技を披露している。

(ライター 宮田彩未 

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