真っ向勝負のスローカーブ
星野伸之 新潮新書・734円
〝遅い球〟を武器に強打者と対戦 著者自らの投球術を記した一冊
80年代後半、従来の野球選手像を覆す長身スリムでモデルのような投手たちがパ・リーグを席巻した。西武・渡辺久信、近鉄・阿波野秀幸、日本ハム・西崎幸広、そしてオリックスに星野伸之。人気と実力を兼ね備えた彼らは「トレンディエース」と呼ばれ、その投球術の違いも見ものだった。
中でも異色が星野投手だ。彼の速球は130km程度。高校球児より遅いが、これを威力十分にしていたのがスローカーブ。縦にドロンと落ちるこの90kmにもみたない球を織り交ぜる配球は「遅球」を豪速球に変え、その緩急差で打者を心理戦に引き込み仕留める。柔よく剛を制す星野投手の芸術的投球術と、かつての名勝負をひもとく本。
【紹介者】
月と六ペンス 柴垣希好さん
月と六ペンス 柴垣希好さん
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