エル・クラン
10月1日(土)からT・ジョイ京都で公開
アルゼンチンを騒がせたある家族の極秘稼業とは?
これは実際に起きた事件である。驚きと衝撃を超えた実話であることを強調しておくが、見ている間にそういうことなど忘れてしまうかもしれない。生身の人間にはとてもできないしわざで、巧妙に作られたフィクションじゃないかと感じるほど。だからこそ重大犯罪だといえるのだが。
裕福で周囲からの信頼も厚いプッチオ家は、家長のアルキメデスと妻、息子3人に娘2人。長男のアレハンドロは地元のラグビーチームの人気選手だし、いわゆるセレブの雰囲気を醸し出す一家に見えたが、彼らは裏でとんでもないファミリービジネスに手を染めていた…。
この事件は、軍による独裁政治を脱して次第に民主化が進んでいった80年代アルゼンチンの社会状況を抜きにしては語れない。裕福に見えた一家だが、それまで軍の重要ポストにあったアルキメデスは実は職を失っていたのである。家族に苦労をかけたくないため、彼が選んだ手法は絶対許せないものだが、何やらあわれにも思えてくる。特に最後に出てくる家族それぞれのその後は、見る者にかなりの揺さぶりをかける。ギレルモ・フランセーヤ、ピーター・ランサーニほか出演。本国で大ヒットし、世界の映画祭でも数々の受賞を果たした問題作。監督はパブロ・トラペロ。
(ライター 宮田彩未 )