FAKE
7月2日(土)から京都シネマで公開
意表を突く衝撃的なラスト、 虚偽と真実の境界に迫る問題作
映画を見た後すぐに、「ねえ、あなたはどう思った?」と尋ねたくなるような作品である。しかも、ドキュメンタリーなのに、フィクション映画以上にフィクション的といえる面白さだ。あの“ゴーストライター騒動”で渦中の人となった佐村河内守氏の自宅へ、森達也監督が何度も足を運んで完成させた。
聴覚障がいがありながら交響曲やゲーム音楽を作曲して“現代のベートーベン”と呼ばれた佐村河内氏。しかし、新垣隆氏が18年間にもわたって彼の代わりに作曲していたと告白したあの騒動を覚えている人も多かろう。森監督は、佐村河内氏の奥さんの手話に助けられながら、当時の彼の心情と、真実はどうなのかを明らかにしていこうとする。
印象的なのは、「信じてくれますか? 僕を」と問う佐村河内氏、「僕を信用していますか?」と問う森監督。ふたりの間で交わされるその言葉は私たちにも伝染し、誰かを信じる、何かを信じるとはいったいどういうことなのだろうという迷宮に送り込まれる。人や何かを見るその角度によって、真実は幾通りもあるのではないかと思うのだ。テレビ番組への出演依頼交渉や海外メディアの取材場面は実に興味深い。そして、ラストの12分間、驚きの結末がやって来る。これは圧巻だ!
(ライター 宮田彩未 )