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試写室・劇場から

平成の三婆

4月28日(木)まで大阪新歌舞伎座にて公演中

本妻・愛人・小姑が同居?豪華女優陣が演じる“老い”の哀歓。

1973(昭和48)年の初演以来、繰り返し上演されてきた有吉佐和子原作の名作であるが、今回は、平成版の「三婆」。現代の老人問題を突く、シリアスな視点を持ちながら、軽やかで楽しく、時にはヒヤリとさせ、やがてホッコリとなごませてくれる。

金融業者の武市浩蔵が、借財を残したまま、お妾(めかけ)の駒代(浅丘ルリ子)の家で急死したことから、本妻の松子(水谷八重子)のところに、駒代と、浩蔵の妹・タキ(山本陽子)が転がり込んでくる。さらにハワイから父親を捜しにやってきたエリザベス(藤田朋子)、浩蔵を慕っていた板前の文江(熊谷真実)がからみ、世にもおかしな同居生活が始まった。しかし、それぞれ肚(はら)に一物持った三婆(ばば)が一つ屋根の下にいるのだから、想定外のゴタゴタが絶えない。こうして24年の月日が流れ…。

それにしても、なんというぜいたくなキャスティングなのだろう。おっとりとふところ深い水谷、粋で女っぷりの良さの浅丘、姑息(こそく)そうでどこかかわいげのある山本と、これまでバアサン役とは無縁と思われていた女優陣が、三人三様、実にチャーミングな婆を演じて見せてくれる。そして納得! 女というものは、いつの時代も、いくつになっても、強くてカワイイ。

(文筆業 あさかよしこ 

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