追憶の森
4月29日(祝・金)からTOHOシネマズ二条、T・ジョイ京都ほかで上映
交差する生と死が問いかけるミステリアスなファンタジー
疲れ果てた顔をしたアメリカ人男性が、飛行機や列車を乗り継ぎ、はるばると富士山北西の青木ケ原にやって来る。そこはどういう場所なのか。自殺の名所だということがわかると、アーサーという名の彼の目的もおのずと明らかになっていく。だが、思わぬことが起きた。樹海の中で、けがをしてさまよっている日本人男性タクミに出会い、アーサーは放っておけなくなってしまう。
アーサーがなぜ人生に絶望してそこへやって来たのか。少しずつタクミに心を開いていくアーサーは、妻ジョーンとの過去を語り始める。では、タクミはなぜそこにいるのか。本当の理由は見る者の感性にゆだねられている。ほとんどサバイバル劇のような場面もあるのだが、幾つかの布石が、驚きの結末へとつながり、最初は暗く重たいと思えた話が、胸にしみこんでくるような希望の色をにじませる。やはり、生と死は一つであり、生きている人間にはわからない神秘というものがあるのかもしれないという思いを強くした。
マシュー・マコノヒー、渡辺謙、ナオミ・ワッツという実力派演技陣に支えられ、また、ガス・ヴァン・サント監督による静と動の絶妙なバランスが効いて、映画はひとつの深遠な詩のようでもある。忘れられない1本になりそうだ。
(ライター 宮田彩未 )