僕だけがいない街｜試写室・劇場から

©2016 映画「僕だけがいない街」製作委員会

時間の逆戻りという特異現象と二つの事件がからむミステリー

主人公の悟は、不思議な現象を繰り返し体験していた。それは、好ましくない出来事を彼が未然に防ぐまで、時間が何度も巻き戻る“リバイバル”という現象だ。ある少年を救うためにけがをしたのもその結果だったが、悟を心配して上京してきた母親が何者かに殺されるという事態になる。第一発見者の悟は思わず逃げ出したのだが、転倒したとたん、なんと18年前の小学生時代に逆戻りしてしまう。

母親の事件と、18年前の連続誘拐殺人事件の関係性を追いながら、さらに少女虐待という社会の暗部も突き、起伏の多い物語展開だ。過去と現在を往復するうちに、真犯人のかぶっている仮面の、ひやりとした冷たさに気づかされ、そして、どこか安らかでもある、意味深な題名どおりのラストへと導かれていく。

原作は、「このマンガがすごい！」ほか漫画界で大きな注目を浴びている三部けいの同名作品。ありえないような現象を扱いながら、あってもいいと感じさせる映像にしたのは、平川雄一朗監督。単にコワ～いお話として見せるのでなく、幸せや夢を求める人と人がつながっていくためには何をすればよいのかという部分に光を当てているのが良いなと思う。藤原竜也、有村架純、及川光博ほか出演。子役たちのまなざしも印象的だ。

（ライター 宮田彩未　 ）