リリーのすべて
3月18日(金)からTOHOシネマズ二条、MOVIX京都で公開
自分らしく生きるという勇気 それを守り、貫いた愛の強さ
生まれつき与えられた性別に違和感を覚える人が本当の自分について語り始める、それが珍しいことではなくなった。でも、すんなり周囲に受け入れられるかといえば、まだまだだろう。ところが、この映画の時代は1920年代、主人公は世界で初めて性別適合手術を受けた人である。当時の世間との摩擦がどんなものであったかと思うと、胸が痛くなる。
デンマークに住むアイナーは風景画家、その妻ゲルダは肖像画家として共に創作活動を行いながら、むつまじく暮らしていた。ある日、アイナーはゲルダの頼みで女性モデルの代わりを務めたのだが、その瞬間、自分の奥底にひそんでいた女性の存在に気づく。外見を変え、リリーと名乗る女性として公の場にも現れるようになるが…。
思いもかけない夫の真実を知ったゲルダは動揺する。夫が夫でなくなって遠くへ行ってしまう、そういう悲哀を彼女はとことん味わうのだが、その後がすごい。リリーを受け入れ、命がけの手術に挑むリリーを支え、共に生きていこうと決意するのだ。エディ・レッドメインとアリシア・ヴィキャンデルの熱演に魅了されるとともに、涙なくしては見られない美しいラストシーンが心に残る。監督はトム・フーパー。15歳未満は観賞できないR15+指定。
(ライター 宮田彩未 )