スティーブ・ジョブズ
2月12日(金)からTOHOシネマズ二条で公開
確かな構成力による会話劇で、IT界のカリスマに迫る
大きな仕事をなしえた人のなかには、周囲からちょっと変わっていると思われる人も多いのではないか。逆に言えば、普通じゃない部分を持っているからこそ、革新的な領域に踏み出せたのかもしれない。アップル・コンピュータの基礎を作り、発展させたスティーブ・ジョブズもその一人であったろうと、この映画を見てますますその思いが強くなった。
ジョブズの伝記的映画は2013年にも作られているが、本作の監督ダニー・ボイルは、異なるアプローチで彼の人柄を描き出す。節目となった3つの新製品発表会そのものでなく、本番40分前の舞台裏に焦点を当てたのだ。仕事仲間とのいざこざ、娘との確執など、この天才を取り巻くやっかい事を、膨大なせりふで明るみに出す。皮肉屋で、頑固で、ビジネスのことしか頭にない彼が、ついに認めたある真実。見る者は、会話のバトルともいえる場面を十二分に味わった後、最後にほのぼのとした気分になる。彼の強さは、弱さをかばうための強さだったのかもしれない。
近年活躍の場を広げているマイケル・ファスベンダーの圧倒的な演技に引き寄せられた。ジョブズを理解しようと努め、仕事のパートナーであり続けた女性ジョアンナを演じたケイト・ウィンスレットの好演も光る。
(ライター 宮田彩未 )