パリ3区の遺産相続人
1月9日(土)から京都シネマで公開
遺産問題が導きだしたのは、秘められた恋と人生の希望
年明けは、おかしくて、ちょっぴり切なくて、最後はほんわかムードのドラマを楽しんでみて。ある日ある時ころりと転回する人生の不思議さを味わいながら、実力派スターたちの細やかな演技に見入ってしまった。
はるばるニューヨークから、マティアスという名の男がパリのマレ地区にやって来る。経済的に困窮している彼は、父親が残したパリのアパルトマンを売り払うつもりだった。ところが、そこには老婦人マティルドが住んでいて、フランスの伝統的な不動産売買制度により、彼女が亡くなるまで売却できず、さらに毎月彼女にお金を支払わねばならないという。驚き、怒り狂うマティアスだったが…。
あの手この手を考えて奔走する主人公に同情しつつ笑いを抑えきれないが、やがて、疎遠だった父親の恋物語が登場するあたりから、ロマンスの色が少しずつ濃厚になっていく。そして、父親に抱いていたとげとげしい感情が変化を見せるころ、マティアスにも遅咲きの花が開き始める。
ケヴィン・クライン、マギー・スミス、クリスティン・スコット・トーマスという名優たちによるせりふの応酬、新旧が交差するマレ地区のすてきなたたずまいが印象に残る。イスラエル・ホロヴィッツが自身の戯曲をもとに監督した。
(ライター 宮田彩未 )