ベル&セバスチャン
10月3日(土)から京都シネマで公開
勇気と信頼でピンチを救った、少年と犬による奇跡のドラマ
原作はセシル・オーブリーの「アルプスの村の犬と少年」、日本では「名犬ジョリィ」の名でアニメ化され、ご存じの方も多いことだろう。この原作に、アルプス越えに挑むユダヤ人家族とレジスタンスという設定を加えたのがこの映画。大自然の澄み切った空気感とともに、心の中に温かさを吹き込んでくれる。
孤児の少年セバスチャンは、ある日、山で大きな野犬と出会う。それは、村人から“野獣”と呼ばれ恐れられている犬だが、不思議にも次第にセバスチャンになついてくる。少年は“ベル”と名づけたその犬を、おとなたちから守ろうとしていた。ところが、村にナチスドイツ軍の姿が現れ始め、戦争の暗い影は、幼い少年と犬を、思いも寄らなかった大冒険へと駆り出すことになる。
セバスチャン役のかわいらしいフェリックス・ボシュエとともに、なんとも人間的な顔つきのベルに引きつけられる。そして、もう一つ、大切な主人公がいる。それは、アルプスの大自然だ。単なる記念写真よりも、恋人に撮られた写真の中で、人は豊かで美しい表情を見せるものだが、自然も同じ。探検家でもあるニコラ・ヴァニエ監督によるこの映像のみごとさは、彼が自然をどれだけ愛しているかという証明だ。トルコの名優チェッキー・カリョが渋い。
(ライター 宮田彩未 )