喜劇 有頂天旅館
7月23日(木)まで、京都南座にて公演中
個性派俳優たちが大真面目に抱腹絶倒の喜劇を演じる
昭和を代表する劇作家・北條秀司の「比叡颪し」をもとに、新たな喜劇に生まれ変わった傑作である。
琵琶湖のほとりの古い料理旅館「魚吉楼」の主人・直三郎(村田雄浩)は根っからの女好き。そのため芸者あがりの女房・おかつ(渡辺えり)が一人で家業を切り盛りしているが、夫の浮気を気に病んだおかつは、おかしな宗教に懲りだした。教祖の怪しげなお告げや、女中頭の信代(キムラ緑子)の助言を信じて、若くキレイな女中に暇を出し、芸者も箱止めにしてしまう。そこへ教祖の口利きでやってきたのは、女形のような優男の板前・島吉(新納慎也)。そのあたりから、魚吉楼は、何やらただならぬ雰囲気に…。
旅館存亡をかけた、てんやわんやの大騒動と、ある事柄をきっかけに、登場人物たちの裏の顔が、次々と噴出する様がテンポよく描かれていく。特に、豊満で一途なおかつと、かすかな毒を秘めた粋な美貌の信代が、取っ組み合いの大げんかをするクライマックスは、大いに見応えアリ。
ギャグやアドリブで笑いをとる舞台とは一味違い、どちらかといえばシリアスな演技の多い個性派俳優たちが、大真面目に喜劇を演じる舞台もまた、その笑いに絶妙の味や深みが加わることを実感した。
(文筆業 あさかよしこ )